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    fujifujino812

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    fujifujino812

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    千字くらい書いて正気に戻った
    途中まで
    何してんだ私は……
    事故の事後

    くらげの骨 時継に騙された。

     燦々と朝日が照りつける夏の朝。戸の隙間から布団に差し伸びた光を見つめる。恐らくは諏訪の領主の次に広い居室で、素っ裸で目覚めた玄蕃は一番にそう思った。
     隣で襦袢姿の男が呑気に眠っている。振り向く速度を変えてもやっぱり結果は変わらぬ。どう考えてもこの部屋の主人、諏訪時継である。ご丁寧に、同じ布団で寝ていやがる。しかもなんか襟とかよれよれになってるし、首に噛みつかれてる跡があるし。これは完全に、どう見ても、同衾後の、いわゆる後朝というやつだ。
     は?なんで?
     女ではなく、年上の男と?
     この俺が??
     いや、女だとそれはそれで責任が発生するから大変なんだけど、え?男?
     残念ながら玄蕃の記憶は昨日の夜更けで途切れてしまっている。何をどう思い返しても、自分だけが裸になる要素など見当たらない夜更けだった。何故なら、昨日は時継と天狗への対応を巡っての作戦会議をしていたからである。玄蕃たち逃若党が京都に行っている間、玄蕃から報告が上がった天狗の対応を決めたのだろう。頼重からの下知か、はたまた時継が決めたのかは知らないが、夕方に本宮へと呼び出された玄蕃は作戦立案という分野で直接指名を貰ったことで浮き足立っていた。夜更けまで時継の部屋で彼の立案を聞き、意見していたのだった。簡潔明朗に話す声を聞きながら、玄蕃は手元をじっと見つめている。意外にも、次期当主という高い地位にありながら時継は玄蕃の意見に良く耳を傾けた。諏訪頼重の庇護を受ける北条時行の元についてから、親もいない子供と軽んじる人間はそもそも数を減らしていた。それに加えて、時継は玄蕃の得意とする忍によく似た特性を持ちながらも、足りないものを補うように子供の意見をよく聞いたのだった。忍ぶ者としての視点はないと言い切る彼の存在感の薄さを考えて意地悪く笑う。確かに、意識して忍ぶ者たちの視点と、いつの間にか忍んでしまう者の見る視点とは、天と地ほどの差がある。詳しくないものからは一緒くたに見下されがちだが、この男は仁義を重んじる武士の身分にありながら、忍ぶ者達のことを良く心得ている。だからこそこの会議は意味があるのだ。無駄話も挟みつつ、粗方話が纏まってきたところで、時継は洗練された所作で紙の上に置かれた碁石を次々と動かして全体の流れを見せていく。その白い手に蝋燭の灯の陰影が踊る様が、妙に玄蕃の心に残る。人為とは異なる、予測できない揺らぎが滑らかな肌を通り過ぎる。波に押し出された子供のように、抗えない何かに背を押されて、玄蕃はふと手を伸ばしていた。穏やかに話していた時継の声は、いつの間にか止んでいた。ただ、驚いたような目が向けられる。普段は瞼で閉ざされた瞳だった。余人とは異なる、ぼんやりとした光しか持たない瞳が玄蕃を見定めるように瞬く。見えているのいないのか、確実に此方を捉えている筈なのに焦点の合わない目に胸騒ぎに似た何かを覚える。此方もまた、初めて見る瞳に応じる。視線を逸らすことなく、ついと指を上に持ち上げた。武士にしては上等な衣の袖が少し捲れて腕が見えても、時継は身じろぎ一つしなかった。少しでも身動きをしようものなら、逃げようかと思ったのに、その機会を逸してしまったことに気づいたのはその少し後だった。言葉はなかった。時継の袖に差し入れた手に、籠っていた熱が徐々に移っていくのを感じていた……。
     いや、おかしいだろ。なんで女じゃなくて男に変な気分になってんだ、俺。
     朝日の中で正気に戻ろうと首を振る。いくら頼りのない顔つきの男であっても、この俺がいきなり男に対して変な気分になるものか。まさか、蝋燭に催淫剤や阿片でも?と考え至ったところで、役目を終えてぼんやりと立ち尽くしている燭台の前に腰を下ろす。燃え残っている蝋燭をまじまじと見つめても匂い、焦げ跡共に特に不審な点は見当たらない。第一忍である自分を差し置いて、時継がそのような怪しげな薬に興味があるとも、通じているとも思えない。あり得るとすれば、当人にその気はないけれど、うっかり使われてしまった薬にもなるものだ。しかし、普段領主である頼重や時行がいる前宮と同じく、ごく一般に諏訪で使われている蝋燭のようであった。
     ではどうして、自分は時継と同衾してしまったのか。
     蔵にあった春画でたっぷりと楽しませてもらった後だ。欲求不満であったわけでもない。そしてこれは最重要事項なのだが、尻は痛くない。影の薄い男はシモも存在感が薄いのかと言えば、流石に自分のケツに入れば何か違和感があるはずだ。……時に、この妙にすっきりとした下半身……。
    面の顎に手を置いてうんうん唸っていた玄蕃は背後に迫る男の気配をこそ感じとることができなかった。
    「ゲンバ?」
    「うわー!?」
     いきなり降って湧いた声に身体が浮く。今し方どうして寝てしまったのか考えあぐねていた対象の男の声は、まだ子供と呼べる歳の玄蕃には心の準備が必要だった。顔を見ることもできないまま、玄蕃は生来の身軽さを活かして、部屋の外へと飛び出してしまった。
     一瞬で遥か後方となってしまった本宮から、男の「せめて服は着ろ!」との呼び声さえ、今はそれどころではないのだ。気まずいどころの騒ぎではない。
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    fujifujino812

    DOODLE千字くらい書いて正気に戻った
    途中まで
    何してんだ私は……
    事故の事後
    くらげの骨 時継に騙された。

     燦々と朝日が照りつける夏の朝。戸の隙間から布団に差し伸びた光を見つめる。恐らくは諏訪の領主の次に広い居室で、素っ裸で目覚めた玄蕃は一番にそう思った。
     隣で襦袢姿の男が呑気に眠っている。振り向く速度を変えてもやっぱり結果は変わらぬ。どう考えてもこの部屋の主人、諏訪時継である。ご丁寧に、同じ布団で寝ていやがる。しかもなんか襟とかよれよれになってるし、首に噛みつかれてる跡があるし。これは完全に、どう見ても、同衾後の、いわゆる後朝というやつだ。
     は?なんで?
     女ではなく、年上の男と?
     この俺が??
     いや、女だとそれはそれで責任が発生するから大変なんだけど、え?男?
     残念ながら玄蕃の記憶は昨日の夜更けで途切れてしまっている。何をどう思い返しても、自分だけが裸になる要素など見当たらない夜更けだった。何故なら、昨日は時継と天狗への対応を巡っての作戦会議をしていたからである。玄蕃たち逃若党が京都に行っている間、玄蕃から報告が上がった天狗の対応を決めたのだろう。頼重からの下知か、はたまた時継が決めたのかは知らないが、夕方に本宮へと呼び出された玄蕃は作戦立案という分野で直接指名を貰ったことで浮き足立っていた。夜更けまで時継の部屋で彼の立案を聞き、意見していたのだった。簡潔明朗に話す声を聞きながら、玄蕃は手元をじっと見つめている。意外にも、次期当主という高い地位にありながら時継は玄蕃の意見に良く耳を傾けた。諏訪頼重の庇護を受ける北条時行の元についてから、親もいない子供と軽んじる人間はそもそも数を減らしていた。それに加えて、時継は玄蕃の得意とする忍によく似た特性を持ちながらも、足りないものを補うように子供の意見をよく聞いたのだった。忍ぶ者としての視点はないと言い切る彼の存在感の薄さを考えて意地悪く笑う。確かに、意識して忍ぶ者たちの視点と、いつの間にか忍んでしまう者の見る視点とは、天と地ほどの差がある。詳しくないものからは一緒くたに見下されがちだが、この男は仁義を重んじる武士の身分にありながら、忍ぶ者達のことを良く心得ている。だからこそこの会議は意味があるのだ。無駄話も挟みつつ、粗方話が纏まってきたところで、時継は洗練された所作で紙の上に置かれた碁石を次々と動かして全体の流れを見せていく。その白い手に蝋燭の灯の陰影が踊る様が、妙に玄蕃の心に残る。人為とは異
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