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「チェックメイトです」
「…ミスターブラック…」
額にあてがわれた銃の引き金に指をかける相手
ーーーミスターブラックの姿を見上げる。
どちらかが絶命するまで戦わなければいけないと言う、到底理解出来ない悪趣味を極めるこの場に拉致され戦わされる事になった僕等。
「手を抜くような事があれば致死量をその場で投与する」とアナウンスがあり、手加減を悟られないよう、どうにか互いに致命傷になる攻撃はせずに時間を稼いでいた。
外れない首輪からは遅延性の毒が抽質され、痛みと息苦しさがじくじくと身体を蝕むのが判る。この感覚は彼も同じだろう。
長くはもたない。
まだやり残した事が沢山ある。死ぬ訳には行かない。
どんな状態でも、危機に陥っても。
今までの僕なら諦める事は絶対にないと自負していた。
でも、君が生き残れるなら。
想いを天秤にかけて勝つのは最愛の恋人の命だった。
静かに瞼を閉じ、これから来るであろう衝撃を待ち構えていると無機質の冷たい何かが唇に押し付けられる感覚に驚き目を開ける。
小瓶だ。流し込まれた少量の中身を反射で飲み込んでしまう。
「……間に合いましたね」
そう呟いたミスターブラックの膝がガクンと折れ、倒れ込みそうになるのを抱きとめる。
…まさか、
「まさか……ミスターブラック、今のは」
「……解毒剤です、…ひとつしか、くすねられませんでしたが……」
ブラックの言葉が理解出来なくて耳の奥でノイズがはしる。
解毒剤?ひとつ?
今、僕が飲み込んでしまった物が?
君の分は?
「ぁ、…っぐ、…!」
「ミスターブラック!!」
緩やかに身体を巡る毒に呻き、腕の中で小さく蹲る身体を抱き起こす。
仮面を外すと元の白さを通り越して青白くなっている彼の肌に、ざわりと鳥肌が立った。
「……良かった、先生……」
そう言って僕の頬を優しく撫でるミスターブラックの指先は血が通っていないかと感じる程に冷たい。
対して血色が良くなり、乱れた呼吸が正常になりつつある相手の状態を見て、心底安心したようにブラックは穏やかに微笑んでいた。
「ブラック…どうして…!!」
今、このコロシアム内部をすまないスクールのメンバーが潜入、探索しているのは把握していた。
彼等の統率ならきっとあと数十分にも満たない時間でこの拠点を制圧出来るだろう。
僕たちがこうして時間を稼いでいる間に解毒剤を入手できるはずだと、そう踏んでいた。
ーーー僕の中では。
「間に合わない可能性が、あり、ましたので、
…確実に貴方が生き残る、方法を、」
「体力的に君が飲むべきだった…解ってるだろ…!?」
「……貴方は、この世界の希望ですから…、」
そこまで言った後ブラックは視線をずらし、
再度こちらを見据えて弱々しく笑む。
「…違いますね、すみません。…私が、貴方に生きてほしかったのです。
……私の我儘です。」
言うと同時に咳込むブラックに、身体をさすり、名前を呼ぶ事しか出来ない。
解毒剤の場所が解らない状態でブラックを抱えて無闇に建物を探し回るのも、強行突破もリスクしかない。
皆の到着を待つ事しか出来ない無力さに握る拳がギシリと音を立てる。
「ブラック…!大丈夫だから、もうすぐ、すぐに皆が解毒剤を持ってきてくれるから!だから」
だから、
「…これからも僕の隣に、
……生涯、僕の傍に居てくれ」
伏せられかけたブラックの瞳が見開き、その深紅のレンズに僕を映す。
その瞳に今、どんな情けない表情の僕が映っているのだろう。
「……すまない先生、その台詞は、…プロポーズ…みたい、ですよ…」
「…みたいじゃなくて、してるんだよ!」
「……ふふ、」
「あ!!笑ったね?僕は本気で言ってるんだけど酷いんじゃないか!?」
「あは、は、」
「ミスターブラック!」
枯れかけの声で途切れ途切れに笑うミスターブラックに「茶化さないでくれ」と悪態をつく。
ーーそんな姿をこれ以上ないという位に幸せそうに見つめて、ブラックは僕から視線を外そうとしない。
普段は僕がずっと見つめていると
「見すぎです」「視線で穴が開きそうなんですが」
なんて言って顔ごと視線を外すのに、
どうして、そんなに、目に焼きつけるかのように、
「……すまない先生」
掠れたその呼び掛けに返事をしたいのに、喉が震える。
一言の相槌さえ絞り出すことができない。
「わたし、幸せでした」
「………っ」
駄目だ。駄目だよ。
君はずっと、俺と
「…あいして、います…」
幸せそうな微笑みと共に、小さく、けれどはっきりと呟かれた言葉に、心臓がこれ以上ないと言う程に重苦しく跳ねる。
「……うん、…俺も愛してるよ、ブラック」
その言葉とほぼ同時に、頬に触れていた冷たい手がずるりと落ちる。
穏やかに閉じられた瞼はこちらの呼び掛けに反応する事はなく、
このあとすぐスクメンが壁バーン((⊂(。`・ω・´。)⊃))!!して到着して、
微かだけど息してる!解毒剤を早く!
って飲ませようとするんだけど意識がなく弱ってるせいで自力ではもう飲み込めないブラックに先生が口移しするんですねなるほどなるほど🤔
(口移しだと飲ませられるんですか?知りません!!!!!!!!!!
それでも衰弱しきっていたせいで目覚めるのに2日くらいかかって、いざ目覚めた時ブラックの周りには皆がいて、驚いてるブラックに泣きながら本当に良かった、って抱きついたり背中叩いたりとお祭り騒ぎになるクラスメイト達、
「まだ病み上がりだから!」って皆を鎮める銀さんとか、それでもどうにかミルクをあげたい赤ちゃんとか居る。
皆の騒ぎように気付いた先生は職員室から一直線に壁破壊して走ってきて、凄い勢いでブラックに飛びついて、でも至極優しく抱きしめるんですね。
そんな様子を見た生徒たちは
「後で壁直せよ先生〜」
「落ち着いたらスープでも持ってくるからな」
「ハァーーーーー!!ゆっくり休めぇ」
とか言いながら退出して、ブラックは真っ赤になって先生を引き剥がそうとするんだけど
自分を抱きしめてる腕は力強くて優しくて、温かくて、大好きな香りがして。
「せんせい…」
って言いながらブラックくんは先生の背に両腕を回して目を閉じるんですね
ーーーーーハピエンにしかならんーーーーーー
読んで頂いてありがとうございました。
お花畑で申し訳ありません(:3_ヽ)_