ダイカナがシンゾウ観覧車に挑戦する話(にしたい) 青い空が、だいだい色に塗りつぶされる時間帯。
『流されるプール』での一件から一夜明けた今、カナタはヒナタを連れてゆぅろぴあを探索していた。
メダルは大切だ。心からの謝罪だって重要ではあるだろうが、それが形になればもっといいだろう。この遊園地において、メダルというものはとても価値のあるものだ。それを差し出せれば、少しはカナタの価値を示せるだろう。そのため、休憩所から逃げるようにして挑戦するアトラクションを探していた。
いくつかの候補はあったけれど、一番良さそうなのは今いる場所にあるアトラクションだろう。
──見上げれば、ゆっくりと揺れ動くピンク色の観覧車が目に入る。
ここはかつて、ユウとゾーヤ、ライオンとライムがクリアしたアトラクションだ。初めてアトラクションに参加したライムもクリアしたのだ。それならば、きっとカナタだってクリア出来るはずだ。
そう思っての選択、だったのだが……
「人数が足りないデミ」
「……二人必要なんて聞いてない」
アトラクションの前に立ち塞がるカエルタマゴに告げられ、カナタは睨むように見返した。
「ヒナタも含めて二人。それでいいだろ」
「よくないデミ。ソレはただのぬいぐるみデミ」
「……それは」
言い返そうとして、口ごもる。
カナタにとって、ヒナタは大切な存在だ。それでも、ゆぅろぴあがヒナタを“ぬいぐるみ”と判定したからこそ、オタカラとしてカウントされたのだろう。
カエルタマゴが怯むような存在が告げているのだ。きっと、彼女の言っていることはあながち間違いでもなかったのだ。
それに……ヒナタは、もう返事をしてくれない。いつも心で見守っていてくれても、それはその場に存在することにはならないだろう。
それならば、出直すべきだろうか。
逡巡するカナタの間近に、影が射し込む。
「〜〜♪」
声の方へと顔を向ければ、黄色い怪獣のきぐるみを着た少年が真っ直ぐにカナタを見ていた。
どうして今ここにいるのだろうか。話は全部聞いていたのだろうか。
分からない点は多かったけれど、カナタはぐっと呑み込んで口を開く。
「……ダイヤ。このアトラクションに、一緒に挑戦してほしい」
恐る恐る。カナタが告げると、ダイヤは親指を空に向けて、にっこりと笑ってみせた。