ギヴァウェイのクロディ 窓の外は雪が降っていた。共用スペースに置かれたベンチに腰掛けて、ディアスは一面の銀世界を眺め遣る。
エクスペルに居た頃は、あまり雪を目にする機会はなかった。故郷は長閑で暖かく、空から降る白いものと言えば専ら花ばかりだった。
人気のない廊下は寒々しく冷え切っている。文明の発達した星の学び舎は、エクスペル最高峰と名高いリンガの大学よりも遥かに大きく立派だ。辺境の星の辺境の村に生まれ落ち、教会の日曜学校で必要最低限の読み書きと計算を手習い程度に受けただけの自分には、全くもって不釣り合いな場所だ。
エル大陸に渉る途中ではぐれたフェルプールの少年の存在を思い出す。天才だの神童だのと周囲からの嫉妬と羨望の入り混じった称賛を受けたあの子供であれば、或いは自分などよりもっと、有意義にこの状況を受け容れて立ち回れたのではないか、とディアスは思った。
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