養母到来 エルフのケーキが嫌いだ。
幼い頃からミルシリルに執拗に食べさせられ、美味しいと言わなければ泣かれた。
いらないといってもエルフのケーキは常についてきた。
だからエルフのケーキは嫌いだ。もう一生分食べた。
「ミスルンさんは、エルフのケーキって好きでしたか?」
「……過去の私は、嫌いだった。好きだと思ったことは一度もない。ただ当たり前にあったから食べざるをえなかった。今はなんとも思わない」
「ああ、やっぱりどこの家庭でもそういうものなんですね。なんだってあんなものが郷土料理なんでしょう。発展もせず、延々と残っているなんて」
「エルフは変化を嫌う。食料事情の厳しい時代からずっとああだから、今の食事感覚や味覚とは違うだろう」
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