年上の彼女「……チッ」
朝食を食べ終えたタイミングでスマホが振動し、画面を一瞥した永四郎が忌々しげに舌打ちを洩らす。深く刻まれた眉間の皺、額に浮き出た血管。老成した永四郎の表情は朝日が差し込む食堂に似つかわしいものでは無かったが、同じテーブルで朝食を摂っていた凛も裕次郎も慣れっこだった。爽やかな朝などこの男に似合う訳もない。
「ぬーがよ木手、また晴美?」
「……そのようですねぇ」
「永四郎、へーく出ろって」
「今忙しいんですよ。ゆっくりお茶を飲んでから食器を下げて、部屋に戻って歯を磨かなくてはなりません」
「ンな事言ってや、昨日の朝から晴美の電話ガン無視やっし! いーから出ろって」
「……はぁぁ~」
凛にせっつかれて、大きなため息を吐きながら渋々席を立つ。食器の乗ったトレイを持とうとした永四郎の手を、裕次郎がそっと制した。
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