にゃんこになりきろう
ミレニアムにある作戦会議室に、ヤマト隊メンバー全員とコノエ艦長、ハインライン大尉、そして何故か居るアスランとメイリンで作戦会議が行われていた。
「⋯⋯それで、今回の作戦ですが⋯⋯」
「ちょ、ちょっといいですか!? 隊長!」
流石にこのまま作戦会議を進められても、頭に内容が入って来ないと判断したシンが声を上げる。
「うん? シン、どうしたの?」
資料から顔を上げて、立ち上がったシンを見てキラは首を傾げた。
「シン⋯⋯」
話を途中で遮るなと言わんばかりのアスランの鋭い視線が突き刺さる。
「⋯⋯」
無言で成り行きを見守るコノエに、ルナマリア、メイリン、アグネスも続くシンの言葉をじっと待っていた。なんとも言えない場の空気感に耐えられないとシンは思いの丈をぶつけた。
「おかしいでしょう!? 何なんですか!? これは!」
そう言って自身の頭に付いていた黒猫耳カチューシャを勢いよく外してバンッと机に置く。
何故シンがそんな行動を取ったのかというと、この場にいる全員がそれぞれの頭の上に猫耳カチューシャを付けて何事も無く作戦会議を始めたからだ。
シンが会議室に入るなりルナマリアやアグネスに捕まったかと思えば、無理矢理頭に猫耳カチューシャを付けられた。しかもルナマリアもアグネスの頭にも付いており思考が停止したのだが、その後部屋に入って来たキラやコノエだけではなく、あの堅物のアスランまでもが大人しく猫耳を付けていた物だから、猫耳に対して文句を言う機会を逃していたのだ。
キラは猫耳付けてても凄く可愛いかったが、コノエは帽子に猫耳が付いているし、アスランも頭に猫耳を付けているのに知らないといった様子の為、皆の頭に付いている猫耳が実は幻覚ではないか? 俺だけがおかしいのか!? とシンは自信がなくなり場の空気間に耐えられなくなり、我慢出来ずに異を唱える結果になったのだ。
シンの頭の猫耳カチューシャを見ながらキラが口を開く。
「⋯⋯ごめんね、シン。もっと僕に拒絶出来る程の力があれば良かったんだけど⋯⋯」
そう言って悲しそうに微笑むキラを見て、シンは言葉に詰まってしまった。
「准将。仕方がありますまい。今日一日耐えればいいんですから」
「⋯⋯そうなんですけどね⋯⋯。僕も似合わないからやめた方がって、ラクスとカガリに言ったんですけど⋯⋯」
キラの口から出て来た2人の名前にシンは察した。
「⋯⋯仕方が無いだろう。二人から命令だと言われれば俺達は従う他無い。第一、今回のこれはヤマト隊メンバーのみ⋯⋯というかキラのみだったのにお前が一人でやるのは嫌だって駄々こねたんだろう? 俺まで巻き込んで⋯⋯」
はぁーと腕を組んで溜息を付いたアスランに、キラが反論した。
「だって、僕だけこんな猫耳付けてたら恥ずかしいじゃないか。ルナマリアとアグネスが付けてたらそりゃ可愛いけど⋯⋯ねぇ?」
男の僕が付けたって似合わないよ。とぷくっと頬を膨らませたキラを見たその場の全員が『いや、あなたが一番似合うし可愛いですから!』と心の中で同時に叫んでいた、
「コホン。まぁまぁ。今日が猫の日という事で、コンパスの広報の為のイベントだと言うことですから、今日一日は我慢しましょう。シンも穏便に頼む」
大人の対応なコノエからの頼みに、シンもこれ以上拒否出来なかった。
「⋯⋯分かりましたよ⋯⋯」
コンパスの活動として、イベントがあれば積極的に参加や取り組みをすると決めた総裁とオーブ代表に逆らうことは出来ない。
「⋯⋯今日だけの辛抱だから、頑張ろうね」
「⋯⋯はい!」
もうこうなったら可愛い猫耳キラの姿を目に焼き付けてやろうと、シンは外した猫耳カチューシャを自分の頭に付けた。
「⋯⋯じゃあ話の続きをするね?」
その後何事も無く作戦会議が進み終わった後、コンパスの宣伝の為の記念撮影が行われ、そのデータは総裁と代表にも送られた。
こっそり記念撮影の時にキラとのツーショットをして貰ったシンが、その写真を貰って大事に持っている事をキラは知らない。
もちろんアスランもまたキラとのツーショットを行い、シンと同様大事に胸ポケット内に持っている事などキラは知らないのだった。
(ただ猫耳付けた皆が書きたかっただけ)