海では気にも留めなかったようなことを、陸に来てから悲しいと思うようになった🐬の話(フロジェイ)「こんにちは、ミセス・バード」
「ごきげんよう、坊や。今日も来てくれたのね、嬉しいわ」
枝からトン、と僕の肩へ軽やかに降り立ったのは、エメラルドグリーンを纏った美しい小鳥。歌うように軽く、けれどもゆっくりと麗しく囀り、彼女は言葉を紡いだ。
別段苦手ではないけれど、アズールやリドルさん、それからラギーさんほど動物言語に精通していない僕でも特に労せず翻訳出来るのは、彼女が一語一語丁寧に、基本通りの発音で話してくれているからに他ならない。感嘆してしまうほどに、彼女は聡明な生き物だった。
「少々失礼致しますね」
小動物とはいえ、相手はレディー。それに鳥という種族は他と比べて成熟が早いと聞くし、彼女が僕に語ってくれた数々の興味深いご経験と膨大で深い知識。自分を基準に年齢を換算すると、確実に僕よりうんとお年を召している。……なんて、それこそ失礼ですね、と心の内で苦笑い。
13178