片思いへのプレゼント「お、犬飼じゃん」
声をかけられた瞬間、繋いでいた手をぱっと離した。
「七月ぶり。すごい人なのに、よくおれだってわかったね」
学校でもボーダー本部でも犬飼の周りには常に誰かがいる。
辻と出かけた先で知り合いに会うことも多く、学校の同級生であれば辻にとっても先輩なので軽く会釈する。
「じゃ、また夏休み明けー」
手を振って別れれば、大したことのない出会いだが、
「なんかやたら知り合いに会うなあ」
「みんな考えることは同じなんでしょう」
ビルの合間にパッと花火が上がって、ドン!という音が耳に響く。
辻はつなぎたかった手を、自分の背中に隠した。
○ ○ ○
「犬飼先輩、お願いがあります」
換装したスーツ姿で辻にお願いされたので、犬飼はちょっと身構えた。
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