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    shirone_chiro

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    shirone_chiro

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    虎穴に入らずんば虎子を得ず……
    さぁ、何を得ようとして、彼は虎穴に踏み込むのか。

    シャオという少年と、シャガラという男の少し変わった非日常的な日常を……

    ##シャガラ
    ##シャオ

    虎穴【虎穴(こけつ)】

    コンコンッ

    「シャガラ様、お呼びでしょうか。」

    ……。

    コンコンッ

    「シャガラ様。」

    呼びかけても返事がない。
    もう一度ドアをノックしようと手を挙げた時、

    ぎぃいいい

    3メートルはある、煌びやかな装飾が施された観音開きの扉が、大きな音を立てながらゆっくりと開く。

    開いた扉の隙間から、溢れ出す煙とむせ返るほどの香り。
    室内に蔓延する揺らめく香の煙を、薄明るい照明がぼんやりと照らす。

    その部屋の最奥のベッドの上に人影が見える。

    「……おいで、シャオ。」

    そう言って彼は、手をこちらに差し出し、人差し指をクイッと曲げる。

    シャラン…

    彼の腕の装飾と簪が、部屋に金属音を響かせる。

    「……さぁ、おいで。」
    「……。」

    心の臓が大きく脈打つ。
    これは、警告音だ。
    本能がそこへ踏み込んではいけない。
    そう告げている。

    シャオは思わず1歩後退った。

    「……シャオ。」

    彼は優しい声色とは裏腹に、全身の毛穴は逆立つ。

    「……おいで。」

    その声を聞いた瞬間、再び心臓が強く跳ねた。
    この感情は恐怖か、それとも——。
    大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。

    「……失礼しました。直ぐに向かいます。」

    シャオはそう言って部屋に踏み込んだ。
    すると扉は再び大きな音を立てながらゆっくりと閉じる。
    ピッタリと扉が閉まると、お香の煙は床に溜まり、まるでベッドが雲の上に浮いているような、そんな錯覚さえ覚える。
    そして、その中心に鎮座する男の肉体を、まるで後光のように後ろから照明が照らす。

    この部屋には何度も来たことがある。
    しかし、今、目の前に広がる光景は異常だ。

    シャラン…

    再び部屋に金属音が鳴り響く。
    思わず唾を飲み込む。

    「さぁ……おいで、シャオ。」

    その言葉に、自分が入口で立ち尽くしていた事を自覚する。

    まずい。
    呑まれる。
    いや、既にもう呑まれている。

    「おいで。」

    心の臓は更に激しく警告音を鳴らす。
    しかしそれに反し、体は吸い寄せられるようにゆっくりと足を進める。
    男の前まで来て、シャオは足を止めた。

    「……。」
    「……。」

    男と目が合う。
    ゆっくりと男の口角が上がる。

    あぁ、ここは虎穴だ。
    オレは虎がいると知っていて、虎穴に入った馬鹿だ。


    シャラン……


    「おいで……シャオ。」


    目の前の男はにこやかな笑顔で両手を広げた。
    その目は鋭くギラついている。

    虎穴に入らずんば虎子を得ず。

    もう既に虎穴に入ってしまっているのなら、
    やる事はーー。


    シャオは目の前に広げられた腕の中に入る。










    「シャガラ様、今宵は何を御所望でしょうか?」









    -end-
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