孤独ごっこの夕焼け空目覚めたら、見知らぬ天井だった。
享楽の脳裏をよぎっていったのは、もはや使い古されて慣用表現と錯覚しそうなフレーズだった。
清潔感と無機質さが滲むベッドから身を起こし、冷静に辺りを観察する。
やはり見覚えがない。
並んでいるベッドや、仕切り用と思われるカーテン。ほのかに消毒液と薬品の香り。
おそらく医療的な空間であろう。
では、何故そんなところに?
目覚める以前の記憶を手繰ろうと、すぅと目を細め思考に沈むことにした。
そうして、すぐに押し寄せてきた巨大な喪失感に、思わず瞬きを数度繰り返す。
驚いた。
何故ここにいるかどころではない。
自分の名前も、思い出せない。
「…………」
足元が抜けて落ちていくような、とても居心地の悪い空間に押し込まれたような、そんな未知の感覚に襲われて、心拍数が上がっていくのがわかる。
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