思い出してトーマ.3物心ついた頃から、高層ビルが好きだった。
青い空に映える透き通ったガラス、眩く柔らかい光を放つパネル、視界の中央に聳え立つ凛とした姿。首が痛くなるほどに見つめることが、幼い頃からの唯一の楽しみといえる時間だった。
だがその度に、心の底に物足りなさが堆積していくのを自覚していた。
「私なら、もっと高くするのに」という不満足。完全に空を割るに足らず、いつもぷつりと途切れてしまう先端の続きを、瞼の裏に思い描いていた。
次第に、空想は具現化していく。
瞼の裏に描いていた物を、空中に指で描く。
それを、ノートの余白に描く。
それを、ケント紙に描く。
それを、3DCADソフトで描く。
あくまで趣味の範囲で行っていた創作活動を兄が興味深そうに閲覧している場面を目撃したときは、何をやらされるのか軽く怯えたものだ。そんな私に兄は、
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