祈り 女性の大絶叫に、思わず振り向いてしまった。それがよくなかった。
子供が車道に飛び出していたのと、その車道を車が走っているのを視界でとらえ、あ、間に合わない、と直感でわかってしまった。全身の血の気がさあっと引いて、立っていられなくなって。人々の叫び声と、嫌な衝突音がどんどん遠ざかりながら、俺は意識を手放した。次の瞬間、俺の視界に入ったのは知らない天井だった。
「こういっちゃなんだけどさ。ハヤト、倒れてよかったよ」
アナウンスがひっきりなしに聞こえる。ここは駅の救護室らしかった。四畳ほどの部屋に簡単なベッドと椅子。椅子にはジュンが座っていた。ハルナは続ける。
「あんなん見たら、トラウマなる。ジュンも吐いたし、シキもナツキも顔真っ青だし」
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