死出の旅 死のうと思った。朝日があまりにも眩しかったから。
朝起きて、自然とそう思えた。今日の朝日が特別眩しかったわけでも、いつもの朝日がくすんでいたわけでもない。ただ、今日しかないと思ったのだ。そもそも死ぬ理由がなかったからここまで生きていただけなのだ。窓から差す日が目に染みたことを理由に死んだって何の問題も無いはずだ。
最低限の遺書を書いてから、必要そうな周辺整理をする。といっても私には頼れるような親族はいないし、態々家に来るような友人もいない。全く持って意味の無い行為だ。まあ、してしまったのだからいいだろう。もしかしたら、誰かが読んでくれるかもしれないし。
質素な最期の晩餐を済ませると、私はベランダに出た。高層階住みなんて外に出るのに不便なだけだ、なんて思っていたけど。まさかこんなところで役に立つとは。最期の最期に、自分の部屋に感謝した。
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