イス尋問『あいつ、全然話さないから通訳来るまで話し相手になりなさい』
アナグラの一室。
矢村カリンはそこへ歩く。
扉を開く。
天井のあかりがカリンを照らす。
紫の偵察上下ではなく、濃い灰色のシャツとカーキのズボンという地味な服装。
「よお!元気でやってるか?」
カリンは人懐っこく笑って椅子に座る。
眼前には両腕を拘束された、椅子に座っている男が一人。
「これ気になる?あ~GEやってんだけどこういうのも仕事なのよね。ど~考えたって、兵士不足だってのに馬鹿だよなあ人事って」
男は表情を変えない。
「何語か分かんねえのもあれだしな、レッスンといこうぜ」
カリンは男が座っていた椅子をサッカーのボールの様にかかとで蹴る。
男は体勢を崩して倒れ込む。
カリンは続けざまに椅子の足で男の喉を抑える。
「雇い主は?」
カリンは自分のイスではなく男を拘束し、首を圧している椅子に座っていた。
背もたれに両腕を置いて、男を上から見ている。
「知るか」
男は喉を椅子の足で抑えられ辛うじて答える。
耳障りなうめき声。
「お~い間違ってるぞ。雇い主は?」
椅子に体重を加える。
ゆっくりとズラして喉の皮を潰すように、椅子の足は男の首に沈む。
「ロシア支部の…!」
「日本語喋れるのね。通訳はいらねえなあ」
カリンはコンセントに向かって
「副隊長!通訳いりませんよ」
コンセントには盗聴器が仕掛けられていた。