光りあれ「また駄目だった」
駄目じゃなかったら、此処にコレが居るなんてことはありえない。おかしな物言いをする。
腹が減っていないくせに飯屋に入り浸ったなら営業妨害だ。靴のフィッティングを受けながら「今日は手袋を買いに来たんだ」ないしは「新車を見に来たんだが」などとのたまったなら、従業員はたちまち心を乱す。
果たすべき目的があり、それに相応しい場所を選び、わざわざ足を運んだくせに、構われたがりの猫のポーズで動かない。女ものの香水と安酒のにおいだけを嗅がせるつもりなら、帰ってもらおう──と、村雨が、ソファの上に転がった男を蹴落とそうとしたところで、ようやく沈黙がやぶられる。
「また振られた」
しかし、壊れたスピーカーは少しばかりの趣向を凝らすだけで、ほんのり色が変わった球を同じ着地点に投げるのみだった。
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