【七五】「…眠れない」
広いキングサイズのベッドの上で何度目かの寝返りをうった。
もともとショートスリーパーのきらいがある五条は、眠るということをあまり重要視していない。いざとなれば反転術式で何とかなるだろうと思っているふしがある。
眠れなくたって朝は来るし、別に眠れなくたってさしたる問題はない。
いつだったか、硝子にそうこぼした時は盛大に呆れられたし「人間の三大欲求をなめるなよ」と凄まれた。
別に五条とてなめているわけではないのだけれど、眠ることに適した身体をしていないのだから仕方がない。
六眼を使えば見えるものの量に比例して、どうしたって脳へと送られる情報量が多くなる。刺激を受け続けた脳みそではうまく眠れやしないし、脳みそが落ち着く前に、次の任務やらなんやらが放り込まれるのだから休まるわけもない。ましてや、興奮状態の脳を落ち着かせるのは骨が折れる。
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