タイトル未定③二人で使っているベッドに脹相を静かに下ろしてやる。着ていたスウェットを雰囲気も何も無くがしがし脱いでいこうとするもんだから慌てて止めに入った。上着は既にベッドの下だ。
「もどかしいな、それともそういう趣向か?」
「ならスウェットじゃねぇんだわ……だから〜今日は優しくしたいし、俺が全部やってあげたいンです……」
どうせ脱ぐんだろ?と脹相の顔に書いてある。変にモジモジされるより、このくらい開けっぴろげな方が俺としては気がラクだけど、即物的なのは卒業したつもりだ。セックスはコミュニケーション。俺も脹相も、背負ってしまったものが大きい。だからせめてお互いだけは大切にしたいではないか。
脹相の右手を取り、手の甲の恭しく口付ける。脹相の手は厚くて大きくて暖かい。何度これに守られたか。指一本一本にキスをして、末端がデカい割に括れた関節を唇で辿り、二の腕、肩、首筋へと辿り着く。
腰を引いて仰向けに横たわらせ、顔を覗き込む。脹相の手が伸びてきて俺の頬とこめかみあたりを撫でた。すごく安心する。俺も同じように脹相の頬を撫でる。肉付きこそ精悍な男性のそれだが、肌質は以外ともちもちしているのだ。長い前髪も払ってやると整った顏が晒される。ふとした瞬間、見蕩れるくらい綺麗なのだが、表情は以外にも豊かだ。
今日はなんだか唇を奪うのが勿体なくて、額、頬、瞼、鼻上の文様、顔中のいたる場所にキスをした。くすぐったさに笑い出したあたりで唇同士を合わせる。角度を変えて、唇の形を確かめて、やがて舌先を招き入れられ、深く繋がってゆく。脹相は鼻から抜ける悩ましい声を漏らしながら俺を受け入れてくれる。舌先同士をチロチロと擽るように擦っていると、もっと来いとばかり舌を絡め取られた。薄目を開けると、トロリと涙を湛えた自分と同じ色の瞳がこちらを見つめていた。
脹相はキスが好きだ。いや、何かを咥えるのが好きなのかもしれない。フェラチオも好きだと言っていたし。とにかく、こうやって舌を与えると、チュウチュウと吸ったり舐めたり食んだりして夢中になる。その隙にスウェットのズボンをゆっくり脱がせ、スラリと伸びた脚を踝からふくらはぎ、肉付きの良い太腿と撫で上げて、今度は履いているボクサーパンツを脱がす。腰を浮かせて手伝ってくれたが、自分が脱ぎ終わると俺の上着、ズボンとパンツも手早く脱がされた。
素肌を合わせると気持ちがいい。胸を重ね心臓同士が脈打つのを感じて、二人して何も言わずしばらくそうやって抱き合っていた。
続