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    o_juju_Pd3fJ

    @o_juju_Pd3fJ

    ゆちょのえっちなやつとか小説とか落書きとかラフとか置く場所
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    ※モブ語り

    ついの棲家⑩俺はオカルト心霊系の動画配信をしている。
    専門は心霊スポットと呼ばれる場所の真相解明。怪異がある場所の過去を探り、何故その怪異が起こるのかを追求している。
    俺が次のネタとして目を付けたのは京都某所にある新築のマンションだ。ここでは女の鳴き声が聴こえるという噂があり、先日10代の兄と妹の心中事件が起きたばかりだ。
    幸い、そこそこの知名度がある俺にはタレコミも入る。色々と調べ尽くしてマンションが建つ土地の元の所有者に辿り着くことに成功した。マンションの前は古い屋敷が立っており、江戸時代より前からずっと同じ一族が住んでいた。文化財にも指定されそうな屋敷を解体し、結構な金額の土地を売ってしまった持ち主。俺はこの家系を調べ、ある新聞記事に辿り着く。それは兄と妹の心中と放火の記憶だった。
    これはきっと、この心中した兄弟の祟か何かがあったのだろう。女の泣き声は囚われた姉妹で、きっと無理やり近親相姦を迫られたに違いない。可哀想な話だが、動画のネタとしては面白い。
    リアリティを追求する俺は、更に踏み込み元の持ち主へインタビューをしようと思った。
    彼は土地を売った金で別の場所に新築の家を立てている。今日はいよいよ彼に接触する。
    玄関のベルを慣らすと、現れたのは黒い長髪の大柄な男で、タレコミ通り俳優みたいな男前だ。彼が加茂脹相ではなかろうか。

    「すみません、加茂さんですよね、僕、先日前のお家の件でお電話した者です。お話を聞かせて頂きたく……」
    「電話?ああ、断ったはずだが……何も話す事はないと」
    「あの、ちょっとでいいんです!何点かだけ質問させてください」

    俺は食い下がる伊達にコレで食ってないんでね!加茂さんは押しに弱いのか、太い眉を困ったように下げて腕を組んだ。薬指に指輪が光る。あれ、既婚者だっけ?

    「何も話す事は無いんだ」
    「聞きたいんです、どうしてあんなに良い土地を売ったんですか?噂の怪異は前のお家からありましたか?」
    「古い屋敷だったから処分しただけだ……噂とは何のことだ」
    「何故別の土地に引っ越しされたんですか?建て直しじゃダメだったんでしょうか?女の泣き声が聞こえるって噂は本当でしょうか?」

    そこまで捲し立てると加茂さんも流石に迷惑そうな顔をした。だれ〜?と家の奥から別の男の声がして、更に大柄な明るい髪色の男が現れた。加茂脹相は確か長男だったはずだから弟か?似てないな。弟らしき人物は玄関サッシに左手をかけて加茂さんの顔横からぬっと顔を出した。

    「どちら様?」
    「この間話したろう、前の家のことを聞きたいんだそうだ」
    「あー……動画配信の?何も無いよ、話す事」
    「あの、じゃあマンションで心中があったのはご存知ですか?僕はこの事件と怪異の関係を知りたくて……」

    心中の話を出すと二人は顔色を変えた。これは絶対何か知っている。俺は尚も食いつく。

    「僕は怪異の原因を探ってその地で起きる事件や事故の防止を出来たらと思って活動してまして、何か知っていたら……」
    「俺たちはあの土地を宅地にするのは反対したんだ」

    口を開いたのは弟の方だった。心中の話を聞いて悲しそうな顔をしている。多分、根はめちゃくちゃ良い人なはず。

    「どうして反対されたんでしょうか?」
    「とにかく俺たちは、マンションや住宅を建てるには向かないと伝えたんだ、それだけは言ったんだよ。それだけ。もう帰ってくれない?」
    「あの、女の泣き声は……」
    「すまんが、もう話すことは無いんだ。親戚も居るし兄弟も居るから、迷惑だ。また来たら警察に相談する。そっとしておいてくれ」

    今度は脹相さんが弟さんを庇うように立ち塞がる。警察沙汰は流石に勘弁だ。俺は渋々頭を下げてインタビューを断念した。
    仕方ないから別角度から探ってみるか……。

    あれ?弟さんがサッシに手をかけた時、薬指に兄と同じ指輪してたよな?気のせいかな……見間違いかも……なんで兄弟で同じ指輪するんだよ、無い無い……てゆーか、脹相さんの鼻上の傷、あんなに目立つのにタレコミに全然無かったな?何か見落としたかな?

    俺はスマホに件の事件をまとめてあるメモを見返した。次に指がスワイプしてメッセージアプリが開いた。
    姉にメッセージを送る。久しぶりだからな、姉さん怒るかもな。
    え、……なんで俺姉さんに連絡取ったんだろう……。

    ぶわりと汗が吹き出る。そうだ、今は真夏。蝉の泣き声が降る。女の笑い声が聞こえる。



    ーそうよ、兄さん、一緒に死んで、あちらで夫婦になりましょう


    終わり
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