転生オメガバゆちょ5「結納をすっ飛ばすね……私たちは兄さんがいいならいいけど親戚が何か言ってくるかもね、向こうの叔父さんも日本にいらっしゃらないんでしょ、しょうがないけど、先に婚姻届出しゃうのはどうかと思うよ」
壊相のこめかみが脈打つのが見て取れる。ちくちくと小言を言うが、脹相と悠仁との婚姻に反対では無いようだ。壊相は婚姻届の証人の欄に自分の名前を書きながらため息をつく。二名の証人欄には伏黒恵、とすでに悠仁の友人の名が記入されている。
印鑑をなかなか押せない壊相に、脹相は微笑んだ。
「やはり嫁ぐのをやめるか」
「そんなこと言わないでよ、兄さんが幸せになるなら私は応援したいんだよ」
「お前達を置いていくのが寂しい」
「すぐ行くわけじゃないでしょ?流石にお式は挙げなきゃ、色んな方向から怒られるよ、準備だって色々あるんだし、引越しは書類出して終わりじゃないんだから」
「壊相」
「なに」
顔を上げた壊相の瞳は今にも零れ落ちそうな涙でいっぱいだった。脹相は幼い頃したように壊相の頭を撫でてやる。
「三人一緒に居れて嬉しかった。二人はずっと俺の事を考えてくれていただろう?俺もそうだ。ずっと昔の約束を果たせて良かった。お前達が俺に気を遣って、自分たちの幸せを避けているのは知っている。だがもう大丈夫だ。俺は悠仁を見つけた。二人はそれぞれの人生を歩んでいいんだ、俺もそれが見たい」
壊相は再び、感情を抑えるように溜息をついた。
「それは血塗にも言ってやってよ」
「もちろん」
「私たちも、約束を果たせて良かったよ。兄さんはずっと後悔をしていたかもしれないけど、私達が死んだのは兄さんのせいじゃない。」
「……お前、記憶が……?」
「さあね、ずっと悲観してきたのは自分だけだって思わないことだよ。そりゃ、虎杖悠仁にはちょっと思うところはあるけど、二人の間にあったことも理解出来る。他人で、しかも子供が作れる体同士ならそうする以外ないじゃん。赤ちゃん抱っこさせてね」
「……ああ、10人産むからな……」
「じゅ……待って、あ、九相図+悠仁ってこと?」
「俺は10人兄弟のお兄ちゃんだったからな、子供にも10人兄弟になって欲しい」
「ふふ、兄さんらしい……体大事にしてよ」
テーブルの上の書類には印鑑がしっかりと押印されていた。