転生オメガバゆちょ7初夜の失敗から慌ただしく時が過ぎる。結婚式は脹相側の親類の口出しが煩く、名家らしく大きく行われた。悠仁側は親類がほとんど居なかった為、叔父と遠縁の者と、あとは彼の性格から見て取れるように友人達が大多数だった。
脹相はその中に記憶にある見知った顔を数人見かけた。いずれも前世の記憶は無いようだが、笑顔で悠仁に話し掛ける姿に、脹相も嬉しくなる。学生の時にお世話になった先生と紹介された中に乗っ取られた昔の親の顔があったが、魂が違うようなので肉体の元の持ち主なのだろう。あとは脹相がよく知っていた金髪の女性。彼女だけは脹相が挨拶する際に、「懐かしいねお兄ちゃん、今日はおめでとう。今度はちゃんと幸せになるんだよ」とこっそり声をかけてくれた。あの時のように、彼女の前では涙腺が弛んでしまい少しだけ涙が出た。連絡先を交換し、良い友人として再度彼女との関係をスタートさせた。
壊相と血塗は悠仁の友人側にボブカットの女の子を認めると彼女に近寄り、挨拶をしていた。その後も話は続き、談笑している様子を脹相は遠くから眺めていた。
その夜、親類との酒盛りも終わりヘトヘトになって帰ってきた二人は風呂に入ってベッドへと倒れ込んだ。悠仁の友人達の一部は深夜二時を回っても未だ何次回か分からない飲み会を開いているらしい。
「流石の俺もつかれたんだけど」
体力お化けの悠仁がため息と共に漏らすのに、脹相がくっくっ笑った。
「朝早かったもんな、お疲れ様、立派だった」
「脹相も綺麗だった」
この世界では存在する性別故に男性体同士の婚姻も珍しくはない。故に白タキシードや羽織袴など、男性体向けのデザイン展開も多く、アパレル業界に居る壊相の見立てにより悠仁とお揃いの部分を残しつつ、脹相に似合う衣装を選んでくれた。
「いい式だった……」
「そうだな」
「悠仁側に俺の知っている顔が何人かいたぞ」
「マジ?じゃあ前世一緒だったんだあ、嬉しい……九十九先生も?話し込んでたけど」
「九十九も記憶があった。彼女は魂について研究していたから、そのせいかもしれないな、良い友人なんだ」
「そっか。良かったな」
悠仁が手を伸ばし、大きな掌で脹相の頭を撫でると脹相が傍に寄ってくる。悠仁の頬を撫で返し、大事そうに親指で目の下をくすぐった。
「悠仁に出会えたお陰で俺は今とても幸せだ、会いたい人に会えたし、見たかった光景も見れた。一番いいのは悠仁が番になってくれたことだ。ずっと好きだった。弟だったけれど、お前の代わりは居ないんだ」
悠仁は満足気にへへ、とはにかむ。
「俺も悠仁を幸せにしたい、俺に会って良かったと思ってほしい、どうしたらいい?」
「どうしたらいいって……脹相ってまだお兄ちゃんやろうとしてるわけ?」
悠仁が大きな肢体で脹相の体を抱き枕のごとく抱き締め、そのまま二人一緒に掛け布団の中に包み込んだ。ぎゅうぎゅうと痛いくらいに抱き締められた脹相の耳には悠仁の心音が聴こえてくる。それは緩やかで、悠仁が眠りに落ちそうだということを伝えてくる。
「俺は最高のパートナーを貰ったよ、可愛くて綺麗で年上で俺のこと大好きでさ、子供いっぱい産んでくれるって言うでしょ、正直前世のことは全然分からんけど、脹相が幸せそうなら何でもいっかって思うしさ。あとタッパとおっぱいとケツがデカい。でかいのにウェストがくびれてるのとか、たまんないや」
「そうか」
「うん、だからさ……もうお兄ちゃん、しなくて大丈夫だよ……」
悠仁はそう言い切ると脹相の体に心地良い重みが伸し掛る。悠仁が寝入ってしまい、抱き締めていた腕の力が抜けたのだ。すやすやと童顔故にあどけない寝顔に、脹相が驚いたような顔で囁いた。
「…………お兄ちゃん、しなくていいのか…………?」