わんにゃん🩸5悠仁はやはり家を空けることがある。長くて一週間ほどだが、犬が一々、明日帰ってくるか、今日帰るか、と騒いでうるさいので、出来れば悠仁には居て欲しい。それか犬を連れて行ってほしいとも思う。犬は悠仁が居ないと、ストレスだかふらすとれーしょんとかいうのが爆発するようで、色々噛みまくって散らかるから悠仁が家を空ける度に大変なことになる。
ので、最近悠仁が居ないような日が続く時は、前に合った犬の匂いのする少年か眼帯の少女が日中の間にだけ来るようになった。
少年、伏黒は人見知りなのか最初こそ無口で何を考えているか分からなかったが、昼飯を食ったり、伏黒の出す犬と遊んだりしているうちに多少話すようになった。
「アニキさん、俺寮に帰るんで……晩飯冷蔵庫にあるんでオニイチャンさんと食べてください」
「泊まらないのか、犬が夜眠れないと騒ぐんだ」
「外泊許可取ってないんで……虎杖は日中だけって言ったんスけど……オニイチャンさん、そんな酷いンスか」
「遠吠えを始める」
「えー……あ!じゃあ虎杖と話します?電話してみるんで」
伏黒はかまぼこ板のようなものを取り出して操作を始める。板から音が鳴ってしばらくすると悠仁の声が聞こえた。
犬はその小さな音も聞き逃さず、黒いのと白いのと遊んでいた部屋から走っきた。
「ゆうじ!」
「虎杖?なんか、オニイチャンさんが眠れないらしいから、寝る前に話したらいいかって、うん、俺もう帰らねえとだし、うん、変わるぞ」
伏黒が俺の真似して話して、と犬に説明すると犬は伏黒の真似をして板を持ち話し始めた。
「ゆうじ?」
「オニイチャン?俺ー」
「ゆうじ、いつ帰る?」
「あーあと2.3日かなあ」
「2回寝るのか」
「そうだな」
「寂しい」
「うん、ごめんな、明日は釘崎が来るよ、服買って貰ってな?」
「ゆうじが、欲しい」
「そうだな、釘崎と伏黒の言う事ちゃんと聞いて良い子にしてたら、またアレしよっか」
「アレだな!?する」
「猫に変わって」
アレ、とは先日のアレのことだろうな……と俺は目星をつける。伏黒はきょとんとしているが、これは多分バレたらいけないやつだ。
俺は犬から板を渡され、同じように話しかけた。
「なんだ」
「アニキ?」
「俺だ」
「声同じすぎんだろ……なあ、聞いてたろ?犬のこと宜しく頼むよ、寝る時よしよししてやって」
「お前が早く帰ってきたらいいだろ」
「まだ帰れねーの、マグロ?マグロの刺身がいいか?買って帰るから」
「でかいヤツだな」
「りょーかい、じゃあお願いしますアニキ」
「仕方ないな世話がやける」
「助かる〜」
板を伏黒に返すと、悠仁と何か話した後電話を終わったようだ。伏黒は帰宅し、犬と二人きりになった。
悠仁は毎日風呂に入れと言うので、犬と一緒に風呂に入る。この家の風呂はなんでこんなに広いのだろう。犬の髪を洗ってやり、あのうるさいドライヤーで乾かしてやり、飯を食わせてやると、日中伏黒の犬と遊んだのが効いたのか船を漕ぎ出した。
「寝室で寝ろ」
「ん……ゆうじ……」
「良い子にしてるんだろ?」
「ん、2回寝る……」
犬を抱えて寝室に向かう。本当に世話の焼ける奴だ。犬はベッドにダイブすると悠仁の匂いが残る場所にグリグリと頭を擦り付けて丸くなった。
……俺もそこがいいのに……。
仕方ないので犬の体を少し押しのけてくっつくようにして眠る。
犬は、ゆうじが居なくて寂しいと少しだけ駄々を捏ねた後睡魔に負けて眠りについた。
こんなに面倒なことをさせて、悠仁のヤツめ、帰ってきたら埋め合わせをして貰わないといけないな。マグロだけじゃ足りないな、と俺は勘定を始め、気付いたら眠りについていた。