わんにゃん🩸6今日寝たらゆうじが帰ってくるのか?と聞くと、のばらが「そうよ」と答えてくれた。
「今日はあんた達のシャレオツな服を買いに行くんだから、いつまでもダサい虎杖の服なんか着せてらんないわ、顔がいいのにもったいない」
のばらは、街で人に聞かれたら呪術師ですって答えるのよ、と教えてくれた。今は大きな事変?が起こった後で、俺達みたいに耳とか頭に皿とか?ある奴が増えたらしい。でも俺は呪術師と言おうとすると舌が回らないから、喋らなくていいようにマスクをされた。ちょっと苦しい。
のばらは楽しそうに俺達の服を選んでくれた。なんでも、ゆうじから小さな薄い板を預かっていて、それでお金を使い放題なのだそうだ。猫はたくさん着せ替えをさせられて疲れた顔をしている。
「サイズ一緒でしょ、細身も合うわね……あ、これも着てみて」
のばらは最後に、ブーツを買った。ゴツゴツして重いやつだ。
「確かこれよ。伏黒に聞いたの」
それは俺達の足にぴったり馴染んで俺と猫は気に入ってしまった。たくさん紙袋を持たされて家に帰り、のばらはめぐみみたいに、飯を用意してくれて帰って行った。
「ゆうじとお話し、したかった」
「明日帰ってくるんだから我慢しろ」
昨日、めぐみがしてくれたみたいにゆうじと話せないのが悲しかった。のばらはそのまま帰ってしまったから。猫はのばらに遊ばれてぐったりしている。
寂しくて猫の頭に触れていると猫が体重をかけてきた。猫も寂しい気持ちでいるみたいで、ちょっとかわいそうだ。頭をなでなでする。今度は猫が俺の腹に抱きついて顔が見えなくなってしまった。猫も疲れたのと寂しいのとで大変みたいだ。ゆうじがいつもしてくれるみたいによしよししてやる。
ゆうじ、早く帰ってこい。
ゆうじの足音で目が覚めた。リビングで猫をよしよししたまま2匹で眠っていたらしい。今はたぶん、真夜中だ。俺が跳ね起きると、猫ものそりと起きて、くあ、と欠伸をした。次いで耳が動いたので猫も気が付いたらしい。ガチャリと音がしたのと俺達が玄関に駆けつけたのは同時だった。2匹でゆうじに飛びかかって抱き着いた。
「ちょ!待っ二人同時は流石に無理!」
ゆうじは何時かのように尻餅をつく。俺はゆうじに頬擦りをしてキスをして唇をぺろぺろと舐める。猫はゆうじの腹に撫でろと言わんばかりに頭を擦り付けている。ゆうじは笑って、どちらの頭も撫でてくれた。
「ちょっと早く帰れただろ」
「大変だったんだぞ!犬のお守りと釘崎の面倒と伏黒の面倒は!」
俺はゆうじがいない間の寂しいのはどこかに吹き飛んでしまい、尻尾が揺れるのが止まらない。嬉しい。が、猫はこの数日のことを思い出してゆうじを詰っている。怒られたゆうじは俺を抱き締めて、だって〜と呟く。
「お仕事だよ、しょうがねえじゃん〜」
「ゆうじ、頑張った偉いな」
俺はゆうじに抱き締められたままゆうじを褒めてやる。ゆうじは凄いんだ。
「へへ……オニイチャンまじで可愛いな……」
「……」
猫はものすごい顔をしたあと、ビタンッと床を叩いて風呂場の方へ行ってしまった。ものすごく怒ってる。
「ゆうじ……」
「怒らせちゃったな」
ゆうじは投げ出されていた買い物袋を引き寄せた。中にマグロのお刺身が入ってるようだ。美味しそうな匂いがする。俺は肉の方が好きだけど。
するとゆうじは玄関に置かれた二足のブーツに気が付いた。
「これ……」
「のばらが、買ってくれた」
「俺のお金だけど……そっか……伏黒にでも聞いたんかな」
ゆうじがなんでか寂しい気持ちになっている。俺達が居るのに。ゆうじは俺の頬を撫でて、泣きそうな顔をしたあと、キスをしてくれた。
優しくてなんだか胸の奥が苦しくなるような、そんなキスだった。