屋根智・観察開始
曇天の夜空をビル群が照らす癖に暗い所は真っ暗な都会の路地を、高校二年生の少年はアルバイトの帰路として選んだ。
今思えば、それが間違いだったかもしれない、と思う気持ちがある。実際は関係なかったとしても、タラレバが少しだけ頭を過ぎるのだ。
「疲れたな⋯⋯、宿題は終わってるから予習に関しては朝でいいか」
長めの錆利休の髪を揺らし、白シャツと青いアーガイル柄のベストを着込んだ少年が、草臥れた顔で予定というよりは定期行動のような物を確認して、僅かな街灯しかない暗い路地を歩く。
行儀悪く歩きながらゼリー飲料を啜っていても、いち学生が買い食いしている程度にしか取られない。それが彼の夕食なのだとは誰も思わないだろう。
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