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    drsakosako

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    僕のために怒ってよ
    タル鍾

    #タル鍾
    gongzhong

    素肌に触れるシーツは冷たく、窓からそよぐ爽やかな朝の風は髪を優しくさらう。天気は快晴、空の下の璃月の街並みは今日も美しい。この上ない目覚めの朝であるはずなのに、タルタリヤの眉根には皺が寄っていた。
    「あのさ、先生」
    タルタリヤの目の前には、つい数分前まで自分と同じように無防備に肌を晒し、瞼を重たげにして布の海に溺れていたはずの男。鍾離は常通りのぴしりとした隙のない衣服に身を包んでいた。些かの不満げな声色を全く隠す事もなく、タルタリヤはシーツにくるまったまま、ベッドの端に座る鍾離の背中に声をぶつける。
    「そろそろ公子殿も起きてはどうだ」
    「や、それもそうなんだけど」
    「何処にかかる『も』だ」
    「いま俺話しかけただろ? そこの『も』だよ」
    「ああ……」
    一見しゃんと見える鍾離の背筋だったが、服の中身はそうでもなかったらしい。ぼんやりとした、いつも以上に覇気のない生返事にタルタリヤは誤魔化されそうになる。
    「一応訊くが、その『も』は何だ」
    「いい人がいるなら言ってほしいんだ、俺にだって節度があるから」
    「話の筋が見えないが」
    「いや、言ったままだけど」
    「更に見えない」
    タルタリヤが手繰り寄せた薄布は、自身の熱を吸ってほんのりと熱が灯っている。寝起きを愚図る子供のような仕草だ。鍾離の視線がシーツの上を滑り、そしてタルタリヤの何処か胡乱な瞳を覗き込む。
    「仮に俺に意中の者が居たとして、それ以外の人間と軽々に寝るのは不義に過ぎると感じる」
    「あれ、そうなの」
    「捉え様によっては、大分俺の性質を侮っているように聞こえるぞ」
    「あは、御免なさい。怒った?」
    「いや。俺自身、浮世から離れた物言いをしている自覚は少しばかりある」
    「本当かなぁ……でも怒ってないの? 本当に?」
    「諄い」
    「んふ、そう。まあ、いいか……先生、今日の夕飯、一緒にどう?」
    「予定はない、何時もの場所でいいか」
    「ううん、じゃあ、また今夜」
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