交合、交接、交尾。交わると称するそれが繁殖を主とする行為ではない事を知ったのは、どれだけ昔のことだったろうか。情を交わすとはよく言ったものである。髪を指で梳き、ぬるい手の甲で唇の温度を確かめて、少しだけ伏せた瞼の奥から水底のような青藍が見据えてくる。肉付きの良くなった魂が、じわりと熱を持つ。
「上の空に見える」
「ん、……」
タルタリヤの手指が鍾離の輪郭をつ、と撫ぜる。少しだけ緊張に強張っているようにも見えたそれに頬を擦り寄せると、鍾離のなめらかな髪の一房が褥に広がった。
「余裕があるな」
「理性を取るなんて、らしくないかな」
鍾離がほくそ笑んで煽ってみせても、タルタリヤは目の色を変えることはなかった。それどころか、白布に散った鍾離の髪に、身を屈めて口を付ける振る舞いまですると来た。
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