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    drsakosako

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    紙一重の交歓
    タル鍾

    #タル鍾
    gongzhong

    戯れに重ねた刃がぶつかり合う音は、身体の暗い奥底でたゆたう熾火へ注がれる揮発油のようなものだった。児戯であるはずの剣戟の一つ一つが、退屈な策謀でなまくらになりかけた身体を乱暴に叩き起こし、つまらない謀略で喜悦を忘れた精神を目覚めさせていく。
     此方が半歩踏み出せば、彼方が半歩引いて、薙ぐ。彼方が強烈に数歩踏み込めば、此方とて引いてなぞおれない。激流の刃のかけらを服に染ませるタルタリヤは、得も言われぬ興奮を背筋に走らせる。散る水の花びらの奥で、梔子色に爛々と輝く彼の瞳があまりにも熱を帯びていたから。
    「――……全く、見惚れちゃうね」
     槍の穂先に水の刃を砕かれるやいなや、そのまま弾かれるがままに後ろへと飛び退く。さざめく刃を数千の飛沫に変えてから矢の形へとこごらせて、背負った弓を握り、番える。水の刃を砕かれて、ぐ、と限界まで引いた弦から空気を裂く弓矢が放たれるまでは、一秒も無かった。
     的になっているのは、文字通り神の造物たる男。槍の構えも、玉のような汗がなぞり落ちていく頬の輪郭も、闇に浮かびそうな程の凄絶な光を讃えた瞳も、何もかもが誂えられたかのように美しい男だった。そんな男の前で己という男は、どれだけ卑しく、獰猛に、剥き出しの本能を浮かべているのだろう。
    「ああ……酩酊の、匂いがするな」
     散る飛沫の霧の中に佇み、口角を吊り上げてうっそりと美しく笑む鍾離の眦に、思わず息を呑む。槍の穂先で薄く切り裂かれた頬の痛みなんて、気にもならない。
    「……正気? 自分の獲物から手を放すなんて」
     矢は、鍾離に届かなかった。
     己に向かう矢の先端の中央に、鍾離が自らの槍を投擲したのだ。主から手放されたそれは、タルタリヤの足元の地面に屹立するかのように突き刺さっている。
    「代わりなら、それ。そこに」
     遊ぶように、ちょい、と鍾離の指が、タルタリヤが握る弓を指す。思わずぱちぱちと瞠目した後、いつまで経っても使い心地が慣れないそれを持ち上げた。鉄で出来た弓は木製のものよりも遥かに重い。子供なら持ち上げる事すら難しいだろう。普段弓矢を扱う人間ですら、まともに構えられるかどうか。
    「矢は?」
    「岩で作る」
    「あ~~、もう滅茶苦茶だよ。たまんないな……」
    「公子殿はそれを使うと良い。弓よりも得手だろう」
    「まあね。でも先生、負ける予防線の言い訳としては下の下だよ」
    「そっくりそのままお返ししよう」
    「口が減らないね。どうなっても知らないよ」
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    清(せい)

    DONE美容師タル設定お借りしました。

    現パロ。


    現パロにするとタルと鍾先生の口調がよくわからん難しい。
    敬語タリヤがタメ口になるタイミングを考えている。いつ?
    美容師タルは付き合い始めてもしばらく敬語抜けなくてしょ先生によそよそしく感じるからいい加減やめろって怒られるんですかね。

    お客さんとプライベートで関わりを持っちゃいけないとかで好きになってしまってモヤるタ(文字数
    19:24


    都心から少し離れた郊外の駅。



    冷たい空気に長時間さらされたせいか
    少しだけ身体の感覚が鈍い。




    ちらりと時計を確認して、出口へ向かって歩き出す。


    閉店作業の時間だ。


    今日も何人かに声をかけてみたけれど、
    実際に店に来てくれそうな人は居なかった。



    手応えのなさに沈んだ気持ちのまま
    はぁ、と小さくため息をついて
    ふと顔を上げると
    さらさらと揺れる長髪が目に入る。


    ロータリーと道路を跨ぐようにかかるデッキを
    冷たい夜風が通り抜ける。

    風が黒い髪を撫でる度に
    フットライトのオレンジ色を反射して、
    キラキラと輝いて見える。



    綺麗な髪だな、そう思ったと同時に追いかけていた。




    すみません、少しいいですか?



    声をかけてから進行方向に回り込む。



    きょとん、とした顔をするその男の双眸も
    キラキラとオレンジ色に輝いていた。



    綺麗な人だ。じわじわと顔が熱くなっていく。



    「あっ、 えーっと、ぼく、こういうもので」


    しどろもどろになりながら
    トートバッグからビラと名刺をセットで取り出して渡す。


    「近くの美容室のスタッフで 1751