「そんなに気になるなら、キス、してみますか」
「は……?」
ポロッと噛んでいたアイスの棒を落とした。既にメインのアイスは食い終わったあとで、手持ち無沙汰に先端をがじがじと噛んでいた棒だ。無数の歯型がついたそれがローファーの上に落ちた。
やけに蝉の声が遠く感じる。暑すぎて脳みそが茹だりそうだ。ゆで卵みたいに固まっちまうかも。そういやァ、今日はオムライスを作る予定だった。卵、あったっけな、なんて思考が飛びかけてまた千早に戻って来る。
……てか、コイツ、今なんて言った? キスって言った?
「アハッ、酷い顔してますよ、君」
「お前が変なこと言うからだろうが!」
「その前に藤堂くんの方が変なこと言ってましたよ」
はて、そうだったっけか、と数分前のやり取りを思い出しつつアイスの棒を拾う。それをアイスが入っていた袋に押し込みながら今度は千早の顔を見た。というより、唇を見てしまった。
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