魅惑のぱい「ルカワのパートナーってハナだったのか」
つい先日、下世話なゴシップ紙で二人の関係がスッぱ抜かれた。流川としては特段隠していたつもりはなかったが、それでも公言している関係でもなかったから2日ぶりに顔をあわせたチームメイトに聞かれることになった。
チームメイトは日本の部活と異なりあくまでもビジネスの関係だ。流川はベタベタと殊更に仲良しごっこをしたりしない。
それでもコートでバスケに真剣にぶつかりあえる、この環境が気に入っていた。だから、そんな極めてプライベートな話題を向けられたことに意外の念を抱き、相手の顔を見て納得した。
彼は流川よりだいぶ年上のベテランで昨シーズンまで花道とチームメイトだった。
花道は流川とは真逆にチームメイト達と友人と言える関係まで仲良くなる。互いの家に行き来し、相手の家族の誕生日プレゼントまで用意してお礼のメッセージを貰っているのを見るのも日常茶飯事だった。
彼にとって、流川のパートナーを知らなかったことではなく、花道のパートナーを知らされていなかったことに驚いたのだろう。
「ええ。特に周りに言ってはないですが」
「ああ、いや責めてるわけじゃないんだ。ただ花道とは親しくしているつもりだったから」
「オフシーズンにならないと会うこともないから、知らないのは無理ないっす」
「なるほどな。でも花道を選ぶとはいいチョイスだ」
「ですよね」
「だよな」
会話に流川と同世代の別の選手達が混ざってきた。
「ハナは明るいしいい奴だし」
「そうだな。あいつといると向上心も刺激される。ナイスガイだ。将来のためにもいい相手だ。幸せにな流川」
「うす」
「あーあ!俺も見る目がほしー!俺なんかいつもおっぱいのデカさに負けちまって……」
「俺も俺も!金ばっか掛かる女なのはわかってても尻に惹かれちまう俺はダメだ」
若い男が集まればあっという間に下な話題が出るのは洋の東西を問わない現象だ。
俺はおっぱい派だの、やっぱり尻だの、いや俺は足だのと下世話な話で盛り上がる。
「その点、流川はバスケに理解があって、お互い高めあえる相手を選んだんだな。すげーよ」
言われて流川はハテ?と首を傾げた。
果たして自分はそんな高尚な理由であの赤い髪のバカを選んだのだったか?
あっちもバスケ選手だからバスケには理解があるが、出会った頃はドリブルも知らない素人だったし、付き合うようになった頃も別にそこまで上手くはなかった。
ただ目を離せないプレイをする男だったが。
それに彼らのパートナーとて皆それぞれに恋人を支えているように見える。それこそオフシーズンにしか会えない自分達より余程。
つまりこれは自虐と見せ掛けたパートナー自慢なのだろうと流川は理解した。
別段バスケの練習相手として花道と付き合っているわけではない。それだけなら友人でよかったはずだ。だが自分は我慢できなかった。自分が彼に向ける感情は友情ではなかった。
何が友人とは違ったのか。ハテと首を傾げたまま恋人を思い出すと、想像するのはどうしたって最も親密な時間。全裸ですべてを晒しあって最も近くに行く瞬間。
モワ~~~ンと流川の脳裏に浮かんだのは、最初はご機嫌に騎乗位でマウントをとっても結局は感じすぎて体を支えきれず流川に覆い被さるようになってしまうせいで目の前にくる肉厚なふわふわのおっぱい。四つん這いになり、腰を上げて流川に差し出されたスポーツマンらしい巨大な尻と、驚くほど敏感な背中の怪我痕。
全身に流川がつけたキスマークと噛み痕、そして汗にまぎれる僅かな白濁。
ただの記憶だというのに自分のブツが固くなりかけるのを流川は自覚した。
だからつまり
「俺もおっぱいと尻に惹かれた」
真顔で珍しくも下ネタに乗ってきた流川と、その発言内容にチームメイト達は驚きつつも
「「「流川。今ほどお前に親しみを感じたことはない」」」
清々しい気持ちで、親指を立て男達は分かり合ったのだった。
ーー一方
「ハナ!ニュース見たよー」
「ハナのダーリンてルカワだったのね」
花道はいつも朝飯を食べに行くカフェの店員という名の友人達に捕まっていた。
何度か流川も同行してきたことがあったから彼女達も流川とは顔見知りだ。
「顔か?」
「顔っしょ。ハナちゃん面食いだもんねー」
「まぁでも顔は大事だから」
「それな」
「ふんぬー!!」
良いようにからかわれ、顔じゃないと否定するからには恋人の内面を褒めねばならず、それはそれで恥ずかしすぎてできん!!と真っ赤になって唸る花道がいた。
ついでに後日
「てめー!!チームメイト相手になんつー破廉恥なこと言ってんだ!!!」
「む、ハレンチじゃねえ事実」
「か、か、か、体目当てだったんか!!」