夜に焦がれる2時。親の目を掻い潜って玄関のドアを静かに開けた。
冬の冷たい夜風がしんみりとさせる。小走りでいつもの場所に向かう。深夜は特に寂しいと言うもんだからつい会いに行ってしまう。
いつもの公園が見えてきた頃にポケットからスマホを取り出して電話かける。
「もしもし?私だけど」
「何?」
「何じゃないでしょ、会おうよ」
「なんで、今日も会ったでしょ」
電話越しにごそごそと音が聞こえて思わずはにかむ。
「待ってるから」
そう言って私は電話を切った。歩いてるうちに公園に着いたからベンチに腰かける。それにしても、誰もいない公園は正直不気味だ。冷たく吹く風に思わず縮こまった。
「…来るかな」
こうやって会うのはお互い眠れなくて寂しい時だけ。別に私たちは付き合ってないけど、要するにそういう仲だから今更告白なんて、そう思ってる。
静まる空気に俯く。早く来ないかな。
○
「愛音ちゃん、ねえちょっと」
体を揺すられて目を開ける。やっぱり来たんだ、正直不安だったけど。
「来たんだ」
「もう、こんなところで寝ないで」
虚ろな目を擦ってそよりんを見る。体は冷えきっているのに、どうしてこんなに心が暖まるんだろう。
「私が来なかったらどうするつもりだったんだろうね」
「んー、考えてなかった」
私はベンチから腰を上げると待っててと一言告げて、自販機で温かい飲み物を買った。
「寒いでしょ、はい」
「あ、ありがとう」
聞くまでもないそよりんの好きな飲み物を渡した。嬉しそうだ。
「前までは夜更かしはしない主義だったのにね」
私が意地悪を言うとそよりんはムッとした。
「誰かさんがこんな遅い時間に呼び出すから」
「嫌だった?」
「…別に」
会ったからと言って別に話すこともない。そよりんの表情を見たり、仕草を見たりしてるだけで私は楽しいし嬉しい。
…一通り喋ったし、帰ろう。私はそよりんの手を取った。ほんと、ずっと冷たいな。
「家まで送る、行こ」
そよりんの家の方向まで歩いていると、段々繋いだ手が同じ温度になった。
「…寒いの、ちょっとマシになった?」
「ちょっとだけ、ね」
こうしてないと、いつまでもそよりんの手は温まらない。
「いつになったら言ってくれるの?」
「え」
身体中に熱を感じる。私は悟られないようにそっぽを向いた。
「な、何の話」
「私から言ってもいいんだけど」
そよりんはそう言うと繋いだ手を強く握ってきた。
「それは駄目!!もうちょっと、待ってて」
私たちは、そのまま夜に溶けていった。言うのはもう少し、暖かくなってから。