小さな箱を開けてみたら「煙草、やめてって言ったよね」
そよりんの手には、私の吸っていた煙草の箱があった。一週間ほど前、隠れて煙草を吸っていたらそよりんに見られて怒られてしまい、もう吸わないで、と言われてしまった。
でも、今日は別に吸いたくて吸ってたわけじゃないんだけどなぁ、なんて思いながら渋々ごめんってーと言ってなだめた。
「持ってるのこれだけ?」
「あ…うん、それだけ」
そよりんは怒っている。でもどこか不服そうにその小さな箱を見つめていた。
「構って欲しいだけなんだけどなー…」
「は?」
「あ、えっ」
ヤバい、声に出して言ってしまった。
この歳になって、こんな子供っぽいことを言ってしまったのがめちゃくちゃ恥ずかしい。
「や…今のは、その」
「あー…そういうことだったんだ」
そよりんはちょっとにやにやしていた。それがなんか気に食わなくて私も手を打つ。
「ねぇ、この間そよりんが愛音ちゃんには健康にいてほしいから吸っちゃだめって言ってたよね?」
「え…うん、そうだけど」
「それ以外に理由、あるよね?」
「えっ」
じゃなかったらさっきみたいな顔はしないはずだ。そよりんは嫌々口を開いた。
「…のとき」
「え?」
「キスの時!なんかこう、匂いが嫌だなって…」
そよりんは顔を隠して言う。でも耳は真っ赤だった。
「わかったわかったぁ、吸わないってもう」
「愛音ちゃんもあんな子供っぽいこと言ってたくせによく言えるよね」
「う…」
煙草一つでここまでお互い恥ずかしい思いをするとは思わなかった。