① 月島の靴下に、穴があいていた。
そのことに尾形が気づいたのは、月島の家に行き来するようになって間もない初夏の頃だった。確か金曜の夜。いや、互いに多忙を極める仕事が終わってからの帰宅のため、日付もすっかり変わってしまっていたので、正確には土曜日なのかもしれない。とにかく二人ともくたくたで腹も空いていたから、もう飯は作らず弁当を買って、着替えもせず狭いリビングだというのに横並びで夜食を貪っていた。
月島も尾形も行儀悪くカーペットの上で胡座を欠く。そのような状況だから、良くも悪くも相手の足裏がしきりに目に入るのだった。月島が履いていたのは濃いグレーの、どこにでもあるような靴下。こちらに近い右足の親指の付け根と踵の布が、一円玉よりも若干小さい程度の大きさでそれぞれ歪つな丸型に切り取られていた。
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