寒空の下、塚本太郎は考えていた。昨晩の出来事、昨晩の彼の事を。
ふわふわした心地で部屋へ帰った。あの場で起きた(起こした)こと、見たもの、思ったこと、声、手や唇に残る感触。いろんなものが熱をもって渦巻いて、寝台に腰掛けたまま動けず、やっと横になっても寝返りを打つばかりだった。ようやく眠気がやってきたのは、カーテンから淡く朝日が漏れてくる頃だった。
「塚本どうした、腹減ってないんか」
「うーん、まあ」
朝餉もそこそこに重い体で職務にあたる。最初はまずいと思ったが、冷たい風を浴びながら機体点検、部品交換、給油、磨きと手指を動かしていくとなんだか頭が冴えてくるようだった。同時に自分を明け方まで悩ませたあれこれも徐々に整理されてきた。
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