ハッピーバースデー【さとみくん
お誕生日おめでとう】
四月一日。
午前十二時ぴったりにLINEに送られてきた聡実宛のメッセージ。
それはシンプルではあるが、確かに誕生日を祝う言葉であった。
その事実が俄には信じられず、聡実は小さく自分の頬を抓る。
「ゆ、夢やない」
送り主は成田狂児という、つい先日まで三年半もの間音信不通になっていたヤクザの男である。
生きているのか、死んでいるのか。
生きているならば、何故連絡の一つも寄越さないのか。
ソプラノが出んようになった、僕のことはもういらない?
諦観にも似た疑問と、あの夏を忘却出来ぬ怒りを心の奥底に抱え過ごした高校三年間。
これで全部仕舞いだと卒業論文を書き上げ、いざ新天地に旅立とうとした日に、その男は再び聡実の前に姿を現した。
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