誘惑「ここにいたのかね」
ガンガディアはようやく探し当てたマトリフに駆け寄る。地底魔城は迷路のように入り組んでおり、人を探すのには苦労する造りだった。
マトリフは手に酒瓶を握っていた。足元には空の瓶が転がっている。また食糧庫からくすねてきたのだろう。
「会議があると伝えていただろう。あなたが来ないからハドラー様がお怒りだ」
「マジでお前ら会議とかしてんのかよ」
馬鹿にしたように笑うマトリフは酔いために顔を赤らめ、緩んだ眼差しをこちらに向けていた。その表情にガンガディアは動揺するが、マトリフに悟られないように押しとどめる。
「あなたも魔王軍の一員になったという自覚を持ってもらいたい」
ガンガディアはマトリフの手から酒瓶を取り上げる。不満そうな声が上がるが、それもいつものことだ。
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