男二人が眠るには、どうにも手狭な寝具の上。
僕の体に回された腕が力を込めて、距離が一層近くなる。
彼の背に手を回して応えると、生きている音がした。
「…君の心臓って早いよね」
「そうか?むしろオドレのが遅いんとちゃうか」
そうなんだろうか。
心音を感じられる距離に来た人間は数えるほどしかいないから、深く考えたことがなかった。
そういえば、
「ホームには、心拍が少ない生き物の方が長生きって説もあったらしいよ」
いつかシップで聞いた話。
「ほ〜、当たっとるんとちゃう?オドレは150年も生きとんのやろ。」
なんてことのない雑談。
それなのに胸の奥がしくりと痛んだ気がして、彼の首元に顔を埋めた。
「なんや、自分で話題に出しといて、寂しくなったんか」
その通り。どうしてコイツには、なんでも分かってしまうのだろう。
伝えるつもりもなかったが、隠せないのだから変わらない。
「……何でもないふうに話したら、何でもないことに思えるかと思ったんだ」
「アホやなあ」
呆れを含んだ笑い声。
それでも頭を撫でる手は優しくて。
僅かな間それをじっと享受していると、彼は少し位置を変え、僕の胸の辺りを抱え込んだ。
「…やっぱりちょっと遅いんやないか?色んなところ触ったら、ちっとは早くなるやろか」
ふざけて笑うその瞳にも、僕と同じ気持ちが映って見えて、たまらず僕は彼の頭を抱き寄せた。
胸元の温もりをそっと撫でながら静かに願う。
同じ早さで生きれたら。