「どこ行ったんやろなぁ〜、あのトンガリ頭。」
1年ほど前、ある男が一つの街を消し飛ばし、天の月に大穴を残した。
以来行方知れずのその男を探す旅の道中、立ち寄った酒場にてウルフウッドは独りごちた。
——ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
局地災害、人間台風……怪物じみた異名と逸話には事欠かない、赤いコートの凄腕ガンマン。
ある目的のため、ウルフウッドは何としてもヴァッシュを見つけ出さねばならなかった。
噂話だろうがデマだろうが、僅かでもヴァッシュと思しき情報を耳にすればそこへ向かった。が、目星い成果は未だ得られていない。
本当はあの街と共に消えてしまって、とっくにこの世にはいないのじゃないか。そんな考えが何度頭に浮かんだか分からない。
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