「あっ」
隣から聞こえた声に安城はパッと隣を向いた。隣に立ち並ぶ雪が自分の手元を見つめて止まっていた。色白の肌の上にその肌よりも白いクリーム状のものが乗っていた。安城はつけないから詳しくはわからないけれど恐らくハンドクリームの類であろう。それにしても、と首を傾げた。
「多くない?」
「出しすぎたのだー、うわぁ」
嫌そうな声を出した雪が文句を言いながら両手を摺り合わせていた。手の中で伸びるクリームが白い手を覆っていく。出しすぎたという言葉通り、多すぎるのだろう。テカテカと光るその手を安城は黙って見ていた。
「きっちゃぁん」
「んー?」
「手だすのだ」
「手?なんで」
甘えるような強請るような雪の声に釣られて下ろしていた手を前に出した。なんとなく自分の手を見下ろす。雪がハンドクリームをつけているところを見たことは何度かあったがまじまじと見たのは今日が初めてだった。見比べるように自分の指を擦ると確かに乾燥している気がする。
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