春の終わりと新たな一歩 日が落ち、街灯が辺りを照らし始める黄昏時。夏と錯覚しそうなほどジリジリ肌を焼く昼の暑さから一転、びゅうと吹く風は肌寒さを感じさせる。
もうすぐ見頃を終える桜の木の下で、ひと足先にレジャーシートを敷いて人を待つ水無瀬は持ってきていたブランケットを広げた。
「君も使う?」
「…いらない」
ぶっきらぼうな返答だったが、小さく膝を抱える天青浄の横に一応一枚置き、少しの間敢えて体ごと視線を逸らす。
控えめな衣擦れの音が聞こえても、風に紛れて聞こえないふりを続けて数分後。陽の光が水平線の下に完全に隠れた頃、見覚えのある高身長の人影が二つ近づいてくるのが見えた。
「ええと、この辺りの筈だけど…」
「ふむ…おお!ミサちゃん殿、見つけたぞ!向こうの一番大きな木の近くだ!」
4188