バイオリンの日2バイオリンの日2
MMの娯楽室。
長期の宇宙滞在に備え、ここには色々な娯楽のための品々が揃えられている。
ボードゲームやトランプ、ピアノやバイオリン、トランペットなど、ヘッドホンをつけると周りに音が漏れないようになっている楽器も揃えられている。
だがこちらは、ゲームと違いなかなか演奏する人間がいない。
ある日、僕は娯楽室の棚の片隅にバイオリンがあるのを見つけ、こっそり弾くのを楽しみにしていたのだ。
僕はバイオリンを小さな頃から習っていて、軍に入るまでは毎日バイオリンを弾く時間を大事にしていていた。
その日も僕は周りに人がいないのを確認して、娯楽室へ入り込むと部屋のロックをかけ、バイオリンを取り出しお気に入りの曲、G線上のアリア、パッヘルベルのカノンを弾いた。
これら曲は疲れた心に水が染み込むように満たされるので僕のお気に入りの曲なのだ。
次は何を弾こうかと弓を構えようとすると突然パチパチと拍手の音が聞こえた。
音の方を見ると、アークエンジェルの操舵士ノイマン大尉が立ち上がって拍手をしていた。
僕は誰もいないと思っていてヘッドホンをかけず弾いていたのだった。
彼は部屋の隅のテーブルに座っていたので気がついていなかった。
「素晴らしい演奏をありがとうございます。気持ちが安らかになりました」
まさか誰かに聴かれてるとは思ってもいなかったので、返事がしどろもどろになってしまい、いえ、とか、どうも、とか意味のない言葉が口をついて出ていた。
「もしよろしければこれからも聴かせていただけませんでしょうか」
「あの、笑わないんですか?」
「どうしてですか?」
「ガラじゃないとか」
「いえいえ、こんな素敵な演奏、皆に聴いてもらいたいくらいですよ」
「いえそれはちょっと……」
「じゃあこうしましょう。今度時間が合ったら必ず聴かせてください。誰にも言いませんから」
それから僕達は時間が合うと2人だけのコンサートを楽しんだのだった。