輪の花びら①高台に咲く白い花は海風に揺られ、さらさらと音を立てた。
この場所にいつ、誰が種をまいたのかは分からない。
そうせずにはいられなかった人は、この地で失われた命の鎮魂を願ったのかもしれない。或いは、己の弱さを覆い隠し、許しが欲しかったのかもしれない。
西に傾いた陽は地平線の向こうへと沈もうとしながら、最後の灯火を与えるように緋に染まり、南海の青を黄金色に染め上げる。
全面のオレンジの中、白い花は決して侵されることなくけれど可憐な姿を調和させた。
キラがこの場所を訪れたのはこの時が初めてだった。
コーディネーター、しかもただのコーディネーターではなく、この世界においてあまりにも過酷な性を生まれながらにして与えられてしまったキラは、当然ながら地球上で暮らせるはずもなく、オーブ国籍こそ持っていたものの、この年になるまで地球上で暮らしたことがなかった。
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