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    masasi9991

    @masasi9991

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    お風呂上がりの道タケ漣

    ##道タケ漣

    お風呂のあとの話「新しいボディーソープ、どうだった?」
    「ん? ああ、そういえば匂いがいつもと違った……」
     布団に入りかけたタケルが動きを止めて、自分で自分の腕の匂いを嗅いでいた。
     夏だからって、タケルはパジャマも着ていない。上も下も薄い下着だけだ。そこでもう寝転がっている漣も同じく。自分としては目のやり場に困る。さっきまで一緒に裸になって風呂に入っていたじゃないか、と言われればそれはそうなのだが、裸と下着というのはまた別の情緒があって……。ま、それはいいとして。
     タケルはボディーソープの件にはピンと来ていないようで、首を傾げていた。
    「わかんねぇ。もう鼻が慣れちまった」
    「そうか。自分は結構いいと思ったんだがなぁ」
    「円城寺さんは、そういうの好きなのか?」
    「ん?」
    「いや、なんかボディーソープ……とか、色々試したり揃えたりするのが、マメだと思って。俺は全然気が回らないから」
    「いやあ、自分も一人だったらここまではしないさ。お前さんたちが使うことを考えたら、な」
    「俺たちが」
     とタケルはつぶやいて、視線を漣の方へと向けた。もう寝てしまったのかと思っていたが、布団に埋もれたままもぞもぞと動いている。暑いからといって薄着でいたがる二人が寝冷えしないように、頭からかぶれる物があった方がいいだろうと思いふかふかのブランケットを準備しているのだが、そのふかふかが波打つ下に漣の白い肩がチラリと見えた。
     だから、目に毒だって。少し、汗が滲んできた。風呂に入ったばっかりだというのに。
     漣の様子を見て何か思うところがあったのだろうか、タケルはまた自分の腕に鼻を当てて首を傾げていた。
    「やっぱりよくわかんねぇ……。こういうの、自分じゃ気付かねぇとかあるよな」
    「確かにな。どちらかというとこういうのはすれ違ったときにふと、『あの人いつもと違う匂い……』なんてな。はは、なあ今の、この間のドラマの……ん」
    「円城寺さん、もしかしてそういう……意味なのか?」
     気付くとタケルがじっとこちらを見つめている。しまった。その真剣な目。自分の下心が、見抜かれている。
     その……つまり、自分は……タケルや漣の肌に触れる、そのときに二人の匂いを感じることを妄想して、新しいボディソープを選んでいるというような……いやもちろんそればかりを考えて選んでいるわけではなくてただ選ぶときに少しばかりそういった考えも浮かばなくもなかった、だけなんだが。
    「円城寺さんの匂いを嗅いで、確かめろって」
    「え?」
     違う、と言おうとして続く『そうじゃないなら何なのか』の返答が喉に引っかかって危うく言葉を飲み込んだ。
     自分のそんなどうしようもない葛藤を他所にして、タケルの顔がグイと近づく。本気の目だ。それに、薄くピンク色になった頬の色に少しの恥じらいと興奮が、見え隠れしている。
     バレないようにこっそりと生唾を飲み込んだ。……我慢がきかない。ダメな大人だ。
    「確かに、自分のじゃなくて円城寺さんの匂いだったら『いつもと違う』って気付けるかもしれない」
     布団に膝立ちになって、自分の肩と胸に軽く手を付く。そうして自分を引き寄せながら、顔を近づけてくる。顔、というか鼻を。胸元に。
     いつものタケルよりも大胆な行動……そうしている当人も照れて赤くなっているのにグッときてしまった。自分が誤解させたせいだとは理解しつつも。
     風呂上がりのしっとりと温かいタケルの肌と、胸元に触れるか触れないかの距離で感じる鼻息がくすぐったい。
    「こうしたら、いつもと違うってわかる」
    「タケル、それは……うわっ」
     追い詰められて呻く自分の言葉を遮るように、後ろから頭を掴まれてグッと引っ張られた。漣だ。もちろん他にいない。こっそり近づいて来ていたのも知っていた。
    「漣、急に引っ張るとびっくりするじゃないか。ははは! それにくすぐったい!」
    「ウゼェしクセェ……風呂のときからずっとヘンな匂いさせやがって」
     すんすん、と漣が鼻を鳴らしてるのが後ろから聞こえる。自分の頭を掴んだまま首の後ろ側に鼻を押し当てて匂いを……。タケルよりずっと乱暴な鼻息がそこに当たっているものだから思わずくすぐったさに笑ってしまったが、シチュエーションとしてはそれどころじゃない、な。汗が滲んできた。体温が上がっている。
    「臭くはねえだろ。俺は普通にいい匂いだと思う。……けど円城寺さんっぽくはねーかな」
     漣に対抗してなのか、タケルの顔がもっと近づいてくる。もともとほとんど触れているような距離だったけれども、今はもうほぼ完全に密着状態だ。で、更に漣も対抗心……背中にしがみついてくる。距離が近い。いい匂いがする。新しく使い始めたボディーソープの匂い。甘い。
     自分には合わない匂いか。そうかもしれない。だってタケルと漣の身体にこの香りが――なんて気持ちで選んだものだから。
    「ヘンな匂いさせてんじゃねー。……汗臭くなってきやがった」
    「そこは不可抗力だ」
    「いつもの円城寺さんの匂い……」
     タケルがうっとりと呟いて離れない。漣だって同じだ。変な気分になって、ますます汗が吹き出してくる。
     それだけじゃなく……その、自分っぽい匂いって、そういうことなのか? それって。さっき風呂に入ったばかりなのに、ちょっと汗をかいたぐらいで? 複雑な気分だ……。
     興奮していいのか反省すべきなのか、頭の中が忙しい。別な意味で変な汗が出てきている。
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