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    masasi9991

    @masasi9991

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    土蜘蛛さんと小さい大ガマさん

    ##妖怪ウォッチ

    わしづかみ


     しまった、と思ったときにはもう遅い。手を出したが手遅れだ。そも、先んじて気付かれなかった己が弛んでいるのか、ぬるいのか。ともかくその首根っこをわしづかみに持ち上げたが、どうにもならぬ。
    「ゲコ」
     のんびりと一声、あくびのような抜けた声。顔の半分はある口をぱくりと開いて鳴いた後、口も目もぎゅっと閉じる。もごもごと喉と腹を動かしている。咀嚼をしておるのだろうか。
     宙吊りに掴んだ身体をこちらに向けて、その腹をまじまじと見た。
     まったくこの子蛙がこれほど大食らいだとは知らなかった。しかも量ばかりでなく妙なものも食べたがる。悪食だ。
    「お主、腹を壊しても知らぬぞ」
     丸く膨れた腹は皮膚が薄く、濡れた緑色の内側に薄っすらと内臓、血管が透けて見える。それもどうやら日頃よりもよく見えるような、と思い目を凝らして見れば、何やら内側からほんのり光っている。昼間の座敷ではよく見えぬが。さては今食ろうた数珠のせいか。
     しかし元の玉は決して光ってはいなかった。
    「お主が呑んだがために光っておるのか? おかしな蛙だ」
    「ゲコゲコ」
     可愛げもない返事と共に薄く目を開き、真黒い翡翠のような目玉でちらりとこちらを見た。がすぐに眠たそうに目を閉じる。
    「これ、吐き出さぬか。いやしかし光るようになった数珠を吐き出されても困る故……」
     腹をつつきつつぼやいてはみるが、蛙相手に言葉など通じるはずもない。どころか撫でられているとでも思って気分になったのか、吾輩の手の中で寝息を立て始めた。まったくおかしな子蛙を拾ってしまった。


    (了)
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