堪能 キミが呼吸をするたびに、胸の筋肉が膨らんで上下に動く。それを見ているだけで癒やされる。永遠にこうして見つめていたいが、もちろんそんなわけにもいかない。明日も早いから、もう寝る時間だ。……でも、夜は長いし。キミに話したいことも沢山ある。
「ふっ」
「むむっ?」
話したいこと、何だったっけ? キミの身体を見つめてるうちに忘れてしまった。たったそれだけで一人で吹き出す。するとおれの息がキミをくすぐってしまったのか、今度はキミの胸はぷるぷると小さく揺れた。
「ごめんな、くすぐったかったか?」
「むっふっふっふっふ。この程度どうということはない! 笑うのはいいことだからな。おまえが笑っているとおれもうれしい。む、ふはは」
キミが笑って、キミがしゃべる。するとキミの身体のいろんなところが動く。熱い夜の裸のキミが。眼福だ。
それにキミの上に寝そべっているおれも一緒に揺れて楽しい。
「こらこらそんなところをくすぐるんじゃありません!」
「くすぐってるつもりじゃないんだ。ただキミがあまりにイイ身体をしてるものだからさ」
キミの胸と腰と脇腹と……それから赤毛のもじゃもじゃが生え始めてるところまで、あちこち指でなぞっていく。キミが笑ったりしゃべったりすると、筋肉の形が浮き出てたまらない。
「ううん、そう言われると大変悪くはない気持ち……むふっ」
「もっと気持ちよくなってもらいたいな」
「わはっは! それ以上はいけない! 今夜は眠れなくしてしまうぞ!」
「あははははっ。そんな魅力的な脅し文句、キミの口から聞けるなんて思わなかったぜ」
「脅しじゃないぞ、もういい子は寝る時間だ。ここからはおれもグランツも悪い子になるんだ」
「ン」
顎を掴まれてぐっと上を向かせられる。視線の先には、ムムっと拗ねたようなキミの顔が。きゅっとつり上がった太い眉と鋭く光る真っ黒な目。そんな顔ももちろん好きだ。
それにしても、身体ばっかり見ていたからいじけさせてしまったか? ホントにそういう意味で。それは流石に都合のいい妄想か。でもこんなことされたら期待してしまうのは当然なわけで。
さっきの脅し文句といい、キミはわかってやってるのかそれともうっかりなのか……。
ああ、でもとにかく、このままキミの顔を見つめ続けて夜が更けるってのもいい。