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    masasi9991

    @masasi9991

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    ヴァルフェン事後

    ##ヴァルフェン

    忘我か惰眠か 全く、眠ったような心地がしない。早く起き上がらなければ、早く、主が目を覚ます前にだ。それがいい。このままみっともなく気を失い続けるのは我慢ならない。
     だというのに己の瞼をこじ開けることもできずにいる。疲れ切った身体は指一本動かせない――いいや、そんなことはありえない。そのように腑抜けていては、我が主のため成すべきことも成せはしない。本日もやるべきことはごまんとあるのだ。
     惰眠を貪っている場合ではない。早くここから抜け出さなければ。少なくとも、ヴァル様が目を覚ます前に。そうでなければ。
    「フェンリッヒ」
     そう葛藤している間に、朝が来ていた。耳元に囁かれたその声は鼻歌でも歌い始めそうな調子で、随分と機嫌が良さそうだ。
     開けないままでいる瞼に薄く光が差している。
    「いい朝だ。お前もそう思うだろう?」
     偉大なる吸血鬼が『いい朝だ』などと仰られては威厳が損なわれてしまう。だがそのようにおおらかなところも、この方の強さの一つでもある。――などと考えていると、返事をするタイミングを失ってしまった。
     これではまるで完全な狸寝入りだ。こんな筈ではない。そんなつもりではない。ただあまりに今が心地よいために、目を覚ますことができないでいる。
     なんという怠惰だ。ここは主の寝室だ! 主の傍に在りながら、我を忘れ、或いは怠惰に眠る、どちらも自分自身に我慢ならない! 一体どれほど腑抜けた顔を晒していたというのか、鏡でもなければ見ることはできない。故に恐ろしくてたまらない。
     だからヴァル様が目を覚まされる前に、ベッドを抜け出してしまいたかった。合わせる顔がない。
    「ふむ」
     ……が、未だに半ば夢の中のような心地である。身体に残る慣れない感覚や痛みすらも心地良い。そうして我を忘れたまま、未だ戻って来れないでいる。
     ヴァル様がオレの顔を覗き込んでいる。瞼に透ける眩しさに、主の影が映り込んでいる。その鼻に抜ける囁きの声は、ヴァル様が思案する際の口癖だ。かすかな吐息が鼻先に吹きかかる。気のせいだろうか、それとも余程近くで、見つめられているのか。
     生ぬるい吐息だ――吸血鬼の体温は低くとも、温度がないわけではない――と、昨晩のことを思い出し、脳髄に弱く甘い痺れが蘇る。
    「こんな朝も良い。まだしばらくは忘我に眠るがいい。俺が許そう」
     瞼に冷たい指先が柔らかく触れる。これでは瞼を開こうにも開けない。まるで全て見透かされているかのようだ。
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