短い赤毛に「だんだん、寒くなってきたなぁ」
なんて言いながら、風呂上がりの火照った身体をぶるり、とキミは揺らした。それから大きな口を大きく開いて大あくび。
「今日はもう寝ようか」
「うむ。こんな日は風邪をひかないようにあったかくしてゆっくり寝ないとな」
ベッドの上に腰を下ろして、もう一度キミは大あくびをした。もう目は半分閉じて、眠たそうにしている。でも、おれが来るのを待ってくれているらしい。
おれもしっかり髪を乾かしてから、ベッドの君の隣に腰掛けた。
「むにゃ」
座って腕を組んだまま寝ようというキミの背中側からそっと手を回し、後ろ髪に指を触れた。
まだ少し濡れて、ひんやりと冷たい。いつも元気に跳ね回ってるキミのくせっ毛も、風呂の後には少しおとなしい。
さてキミはまだ油断しているようだ。呼吸はすっかり寝息のようになっている。このチャンスを逃す手はない――と、おれは座ったまま背伸びをしつつ、もう片方の手にこっそり握っていたヘアブラシをそうっとキミの髪に当てた。
「うん? むむ……?」
キミは座ってても当然デカい。いくらおれが背伸びをしても、この体勢じゃ髪を梳かすのはちょっと難しいな。
「デグダス、もう横になろうか」
「ううむ。……はっ! 寝ていた……」
「寝てていいぜ。ほら、ここ」
膝をぽんぽんと叩いてみせると、キミは寝ぼけたままそこに倒れ込んできた。仰向けじゃ困るから、うつ伏せに転がってもらう。ベッドの真ん中に寝ないと、キミにとっては窮屈なのだろうけど。少しの間だけ。
キミはおれや弟たちの世話ばかりしていて、キミ自身のことはお世話させてくれないから、たまにはこうしてキミのスキを狙わせてもらう。
「むふ……? グランツ、おれのことはおかまいなく……」
ほら、いつもこうだ。半分寝ているのに、首を振って拒否してくる。
「おれにもキミの髪の手入れをさせてくれ」
「しかし手入れするほどの髪ではなく……」
「おれはキミの髪の毛だって大好きだ。痛かったりするかい?」
「いやぁ、そんなことをされると、ふあああぁあ。……眠たくなってしまうから……」
「寝ていいんだぜ。今日は早く寝る日だ」
「んんん? ああ、そうか。グランツもはやく暖かくして……ぐう」
「ふっふっふっふ」
大声で吹き出さなかったおれを褒めてくれ。膝の上にうつ伏せになってキミがモニャモニャしゃべるから、太腿がくすぐったくてたまらないんだ! それに、キミがあまりにもかわいい男だから。
このまま一晩中でもキミの髪を梳かし続けていたくなるけど、短いキミの赤毛はもうサラサラになってしまった。名残惜しいな。