しかえし リモート劇は二十分ちょっとぐらい。動画としてはそんなに長くない。でもこのラウンジで、二人並んで見てるには、少し間が気になる長さ。お喋りしてたらすぐだけど、兜くんはかなり見入ってる。
画面の中の僕を、キミは見つめてる。僕はその真剣な横顔に視線が向いてしまう。自分の出てる動画を直視するのはまだ恥ずかしいから――っていうのは言い訳だな。
兜くんって年下なんだよね。小さくてフワフワしてる。その、頬とか。年相応に、そう。丸くて大きな目も、あどけないというものなんだろうけど。だけどその真っ直ぐな目、年下なのにすごく強く見える、かも。老けてるとかじゃなくて、なんて言えばいいんだろう。
初めて話をしたときも、初めて触れられたときも、きっともっとずっと前からそんな目をしてたんだろうなって、思うとなんだか……。
で、しかもその目を見つめてるとドキドキしてきちゃって。
「ん?」
動画の途中でCMが流れ始めて、兜くんが振り返った。見つめてる、じゃなくて見つめ合ってる、になっちゃった。
「どうした?」
「なんでもないよ」
はぐらかさなくたって、いいはずだけど。どうしたのか自分でもうまく説明できないから。
「ほうか? ……のう、今のやり取りこそ、恋愛ドラマのようじゃったのう! 目が合って、『どうした?』『なんでもない』っちゅう……」
「んー、僕そんな言い方してたかな」
兜くんがホントのドラマのセリフみたいにロマンチックな言い方で繰り返すから、恥ずかしくなって話を遮っちゃった。
今の僕の顔、絶対変になってる。ぴぃちゃんや兜くんに言われなくても、これは自覚ある。口、すごく我慢してるのに、笑っちゃってるの我慢できない。
もちろんそれを隠す方法なんかなくて、兜くんにはばっちり見られてしまっている。
「いい顔じゃ」
「兜くんもね」
やられっぱなしなの、少しだけ悔しい。だからからやり返しちゃおって思ったのは、出来心。
CMが終わって、動画がまた再生される。兜くんが画面に視線を戻す。その横顔に、ぎゅっと顔を近づけた。
……ほっぺぐらいならいいよね。一瞬だけ。
やっぱり兜くんのほっぺ、柔らかいなぁ。それに体温がとっても高い。
「も、百々人!」
兜くんはぱっと弾かれたようにこっちを振り返った。ほっぺの、僕がキスしたとこに片手を当ててる。
このびっくりした顔、レアかも。
「ぶちやわらかかった!」
「ふふ、それは僕のセリフ」
兜くんの顔が赤くなってく。やっぱりかわいい。しかえし、大成功だ。