いない間に
は、と息を吸う音が響いた。チビの呼吸の音だ。チビは小せぇから、その音だって小さい。顔に吹きかかった息も微かで、それでも熱く湿気ってたせいなのか、濡れた口の周りと鼓膜がゾワゾワした。
ゾワゾワすんのは、もどかしい。らーめん屋とするときと、違う。
「円城寺さんとすんのとは、違うな……」
「チビがやりてーっつったんだろ」
「オマエがしたそうな顔してたからだ。で、終わりか?」
「……まだ」
わざわざ答えてやると、チビが口元を少しだけ緩める。変な顔。うれしそーなのをわざわざ隠してやがる。あんま見ねぇ顔だ。らーめん屋がいると、もっと顔に出てる。
「おい……」
チビがオレ様の腕を掴んだ。ぐっと背伸びをする。小せぇ……口も、薄く開いたそれも小さい。噛みつくのも簡単だ。こんな小せぇ口でよく耐えられんな、と思った。
1936