物心つく前から、俺の未来は決まっていた。
まだ三つの世界の境界が曖昧だった時代。混沌極めた魔界を統一し、その頂点に君臨せしめた覇者─ 魔王エンデヴァーの後継者。
次世代の魔王。
生まれたばかり俺の顔を一目見た時から、親父は俺を自分の後継者とする事を決めたらしい。兄弟の中で俺が一番強い魔力を持って生まれたから。
次期魔王としての教育は幼い頃から始まった。一般教養を始め魔界の歴史から現在の各地方の情勢まで小さな頭の許容量などお構いなしの知識が詰め込まれ、体には更に魔力を高めるための訓練や戦闘技術を叩き込まれても俺の中身はからっぽだった。
同じ年頃の子どもはおろか、兄弟とすら遊んだ記憶も無い。
生まれた時から父の敷いた覇道を歩むことを強いられてきた。からっぽだった俺はそれに疑問や不満を感じる事すら無かった。
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