命ってのは、思うよりもずっとあっさり消えてしまう。
忙しなく動き回る鑑識班を一瞥し、邪魔にならないよう壁際に寄りつつ被害者を見遣る。色白の顔に肩口で切り揃えられた髪、ブラウスにチノパンといった格好は部屋着そのままだ。
室内は特に荒らされた形跡も見られず綺麗なまま……遺体の側に遺書と思しき紙切れ一枚と椅子、大きな縄とくれば、今どき子供でも何があったかくらい察せられる。
まあ、そう見せ掛けた可能性も大いにありうるし、その線で捜査するんだろうけど。
「ったく……まだ若いだろうに、なんだってこんな」
「さあ? 他人の考えてることなんてわかんないもんスよ」
それに。と言葉を切ると、隣に寄ってきた鮫島先輩からそっと距離をとる。
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